郵便屋

2001/04/05 徳間ホール
観客の見たいモノだけをずらりと並べた文芸風ポルノ映画。
とにかくサービス満点。笑っちゃいます。by K. Hattori


 古くは文芸ポルノ大作『カリギュラ』を世に放ち、最近は『背徳小説』『背徳小説・第二章』などの作品が日本でも紹介されているイタリアの巨匠(?)ティント・ブラス監督。IMDbで調べると、彼の作品はアメリカではほとんどビデオソフト化されていない(例外は『カリギュラ』のみ)。しかし全洋画ONLINEで調べると、日本ではすごくたくさんの作品がビデオやDVDで発売されている。もう還暦を過ぎたおじいちゃん監督なのだが、どういうわけか日本ではこの人の作品に商品性があるようなのだ。なぜだろうか? さっぱりわからん。

 この映画の主人公はティント・ブラス監督本人。ポルノの巨匠であるブラス大先生のもとには、毎日のように女性たちから大量のファンレターが送られてくる。その内容は、彼女たちの赤裸々なセックス体験記。「先生、私の悩みを聞いてください」「先生なら私の気持ちが理解できると思います」という紋切り型の挨拶文からはじまる手紙には、女性たちの性のファンタジーが山盛り。この映画はそんな女性ファンたちの体験手記を、ブラス監督が映像化したという設定。手紙を1通読んではその内容が映像化されるというオムニバス形式で、その合間にブラス監督と彼の秘書との対話が挿入される。この幕間劇のようなシーンがなかなか面白い。若い秘書をブラス監督が誘惑しようとしたり(セクハラじゃないの?)、逆に秘書がブラス監督に自分の肉体を誇示して誘惑しようとしたり(こんなセクハラなら大歓迎!)する様子は、手紙の映画化などよりよほど楽しそうなのだ。

 「最高のH体験告白」をオムニバス形式で映像化しているわけだから、若い娘からちょっと年増の女までいろいろなタイプの女性が入れ替わり立ち替わり登場し、観客のあらゆるセックス・ファンタジーに応える様々な痴態を見せてくれる。さながらセックス妄想の博物館だ。なんてわかりやすい展開! 観客が見たいのはズバリ“あのシーン”だけだとわかっているブラス監督は、面倒くさいドラマ部分なんてすっ飛ばして、ズバリ“あのシーン”だけを次々に見せていく。中には面白いエピソードもあるし、つまらない物もある。でも共通しているのは、どのエピソードも明るいこと。セックスの話題をジメジメ語ることはしないという、徹底して割り切った態度は偉いと思う。例えば「夫がバクチ好きで、借金の形に妻を差し出すことになって……」という聞くも涙の物語も、この監督の手にかかると爆笑編になってしまうのだ。しかもこのエピソード、ちっとも面白くないのに登場人物たちだけがゲラゲラ笑っているという意味での「爆笑編」なのがすごい。理解を超えてます!

 観客が“あのシーン”と同時に見たいと思っているのは、ずばり女性の“アレ”そのもの。ブラス監督はそんなことは百もご承知なので、女優さんたちはカメラに向かってカパカパ股を開いてくれる。当然ここは日本なので、そんな場面になると女性の股間から温泉が吹き出したように画面がボケてしまうのだけれど……。

(原題:Fermo posta Tinto Brass)

2001年6月2日公開予定 銀座シネパトス
配給:アルバトロス・フィルム
ホームページ:http://albatros-film.com/


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