15ミニッツ

2001/03/30 日本ヘラルド映画試写室
デ・ニーロとエドワード・バーンズ主演の刑事ドラマ。
メディア批判をからめた骨太な内容。by K. Hattori


 ロバート・デ・ニーロとエドワード・バーンズ主演の刑事ドラマ。デ・ニーロが演じているのはニューヨーク市警の殺人課所属で、マスコミなどにもしばしばその活躍が取りあげられるベテラン刑事エディ・フレミング。バーンズが演じているのは消防局の放火捜査員ジョーディ・ワーソー。消防士だが逮捕権を持つ捜査官だ。このふたりが共同で捜査することになるのが、低所得者アパートで起きた放火殺人事件。年齢も経歴も所属も立場も違うふたりが、互いに力を合わせながら事件の核心に迫っていくのだが、証拠品や承認を巡っては互いの縄張り意識が首をもたげて火花を散らすことになる。監督・脚本は『2days/トゥー・デイズ』のジョン・ハーツフェルド。『2days/トゥー・デイズ』つながりで現在売れっ子のシャーリーズ・セロンがゲスト出演しているので、ファンの人はお見逃しなく。(すぐわかるけど。)

 消防局所属の捜査官という仕事は、映画『バックドラフト』でデ・ニーロが演じていたものかもしれない。『バックドラフト』は消防署内部だけで物語が進行していくため、この仕事の特殊性がちょっとわかりにくかったのだが、『15ミニッツ』ではこれを警察所属の刑事と対比させることで、ふたつの仕事の違いを際立たせている。年輩のベテラン刑事と若い捜査官のコンビという組み合わせは、無数に生み出されている刑事ドラマの基本パターン。しかしこの映画は中盤にあっと驚く展開があって、「いつものパターンだね」と安心しきっている観客に一本背追いをかましてくれる。予備知識なしにこの場面に出くわすと、かなりびっくりします。

 タイトルの『15ミニッツ』は、「誰でも15分は有名人でいられる」というアンディ・ウォーホルの有名な言葉から取られている。筋立ては刑事ドラマなのだが、この映画で大きなテーマになっているのは、センセーショナルに走りがちなアメリカのテレビ放送。カーチェイスを生中継し、殺人事件の犯人にインタビューし、家族の秘密を暴露する告白番組が拍手喝采を浴びる国アメリカ。外国からやってきた二人組の男はつまらない金銭トラブルから人を殺すのだが、こうしたアメリカの放送事情を見て「この狂った国では何でも許される。異常な行動をすればするほど大衆に支持され罪が軽くなる」と喝破する。人ひとり殺せば残酷な殺人者として死刑になるが、何十人も殺せば精神異常が認められて無罪になる可能性がある。この映画の犯人はそれを利用して、自分の犯した罪から免れようとするわけだ。(日本も似たようなものかもしれない。オウムの麻原裁判を見よ!)

 チャップリンは『殺人狂時代』の中で、「人ひとり殺せば犯罪者だが、100万殺せば英雄だ。殺した数が罪を浄化する」と言い放って良識派の不評を買った。チャプリンはここで戦争批判を行ったわけだが、じつはこの台詞は現代のアメリカ社会でそのまま通用する真理なのだ。テレビメディアの無責任な報道が、殺人者を大衆のヒーローに祭り上げる。結構社会派の映画です。

(原題:15 minutes)

2001年5月公開予定 渋谷東急他 全国松竹東急系
配給:日本ヘラルド映画
ホームページ:http://www.15minutes-jp.com


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