ラッキー・ナンバー

2001/03/29 UIP試写室
『マイケル』のトラボルタとノーラ・エフロン監督が再会。
宝くじ詐欺をめぐるブラック・コメディ。by K. Hattori


 ローカルテレビ局の天気予報キャスターとして、地元では圧倒的な知名度と人気を誇るラス・リチャーズ。いずれはもっと大きなテレビ局で司会の仕事をしたいという野心を持っているラスだが、華やかに見える生活の内情は火の車だった。副業で始めたスノーモービルの販売店は、何十年に1度という暖冬でまったく雪が降らず客もさっぱり入らない。そうこうしているうちに借金の督促状が届いてしまったからラスは大慌て。これからさらなる生活のレベルアップを願っているのに、車や家を手放すなんてとんでもない。そもそもそんなことをすれば、自分の名声に傷が付いてしまう。ラスは友人のギグと組んで保険金詐欺を思いつくが、これはあっけなく失敗。さらに追い詰められたラスは、宝くじの抽選を操作するという前代未聞の不正行為に打って出る。

 主演はジョン・トラボルタ。監督は『めぐり逢えたら』『ユー・ガット・メール』のノーラ・エフロン。名脚本家としても知られているエフロンだが、今回は監督とプロデュースのみでの参加。基本的に善人のみで構成されているいつものエフロン作品と違い、この映画に登場するのはみんな腹に一物ある小悪党ばかり。悪事を働きながらも悪党になりきれないラスという主人公が、いかにもエフロン作品らしいキャラクターかもしれない。

 脇役陣がすごく豪華。テレビ局の重役とラスの愛人を掛け持ちしながら、したたかに自分の利益を計算する宝くじの抽選係クリスタルを演じているのは、『ロミーとミッシェルの場合』『アナライズ・ミー』のリサ・クードロー。ラスに悪知恵を授ける怪しげな酒場の経営者ギグを演じているのはティム・ロス。マイケル・ラパポートはギグの依頼を受けて働く殺し屋役。ビル・プルマンは事件を捜査する刑事の役で出演している。こうした出演者たちが、みんな一癖も二癖もあって笑わせる。

 借金苦で悪事に片足を突っ込んだ男がふと周囲を見回してみたら、近くにいる連中は自分の何十倍もあこぎなことを平気でやる悪党ばかりだったというお話。自業自得とはいえ、主人公は自ら泥水の中に頭を突っ込んでしまうわけだ。ノーラ・エフロン監督は、こうした悪党たちが持つ間抜けさや馬鹿馬鹿しさを描くのがうまい。ところがこうした悪党たちは、残酷さや冷酷さや無責任さや不道徳な部分も同時に持ち合わせているはず。ところがエフロン監督は、悪人たちが当然持つであろうこれらの「悪」を描くのがあまり得意ではないらしい。「すごい悪人なのに間抜けなところがある」とか、「可愛い顔してとんでもない悪事を平気でやってのける」というギャップが脇役キャラクターたちの面白さなのに、毒々しい悪の側面をマイルドに描いてしまうから、キャラクターが平板になってしまうのではないだろうか。

 残酷なシーンでもユーモラスに描こうという意図はわかるし、それがこの映画の中で成功している部分もある。「マック・ザ・ナイフ」の使い方なんて最高に面白いし、このシーンには残酷さの毒もたっぷりと感じられた。

(原題:LUCKY NUMBERS)

2001年4月21日公開予定 銀座シネパトス
配給:UIP
ホームページ:http://www.uipjapan.com/luckynumbers/index.htm


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