ポエトリー,セックス

2001/03/13 メディアボックス試写室
レズビアンの探偵が活躍するハードボイルド・ミステリー。
ケリー・マクギリスがいい味出してます。by K. Hattori


 『女と女と井戸の中』のサマンサ・ラング監督最新作は、レズビアンの女探偵が女子大生殺害事件の謎をたどっていく異色のハードボイルド・ミステリー。主人公のモノローグをストーリーにがっちりとからませ、物語全体を主人公の一人称で描いていくという定番のスタイル。捜査を進めるうちに主人公に降りかかるさまざまな圧力や脅迫。依頼人の秘密。主人公の過去にからむ警察との確執。主人公の前に現れる謎めいた女。こうしたエピソードはすべてこのジャンルの映画では定番とも言えるものばかりだが、主人公が一匹狼のタフな男ではなく、レズビアンの女性だというところがユニーク。ミステリー映画としては「謎解き」に鮮やかさがないが、主人公のキャラクターが面白いので最後までだれることがない。主人公ジルを演じているのは『エイミー』のスージー・ポーター。彼女と深い関わりを持つことになる年上の女ダイアナを演じるのは、『トップガン』『告発の行方』のケリー・マクギリス。かつてハリウッドのトップ女優だった人ですが、さすがに年を取っちゃいました。

 物語の舞台になっているのは、詩人たちの世界です。文壇というのはかなり特殊そうな世界ですが、その中でもさらに小さな世界である「詩」というジャンルに、主人公のジルは迷い込んでいく。それというのも、殺されたミッキーという女子大生が詩人志望であり、生前は複数の有名な詩人たちと親密な交際があったからです。ポエトリー・リーディングの会場から姿を消した、詩人志望の女子大生ミッキー。彼女は何者かの車に乗り込んだまま、ぷっつりと行方知れずになってしまう。そんな娘を捜してほしいという両親の依頼を受けたジルは、それから間もなくしてミッキーが腐乱死体で発見されたことを知る。彼女の両親はジルに対して、娘を殺した犯人を突き止めてほしいと願い出る。

 物語を引っ張るのは「誰がミッキーを殺したか?」というミステリーですが、主人公ジルの関心はミッキーの周辺を洗い出すことより、大学で彼女に詩作の指導をしていたダイアナという女性との情事にあるように見える。10歳も年下のハンサムな男を夫に持つダイアナは、ジルとの同性愛関係を持ちながらも夫と別れるつもりは毛頭ない。それどころか夫にジルとの関係が発覚しても平気の平左で、逆にジルを面食らわせる。お堅いインテリ女に見えるダイアナだが、じつは相当の食わせ物らしい。ダイアナがそんな意外な面を露わにしたあたりから、彼女はこの物語の中の「脇役」でいることをやめ、ジルの感情を時に慰撫し、時に逆撫でする女として、物語の中央にしっかりと自分の場所を占めるようになる。

 映画はこのあたりからミッキー殺しの事件などそっちのけにして、ジルとダイアナの心理的な葛藤や駆け引きを中心に動いていく。最後はミステリーにも決着が付くのですが、僕はこのあたりがちょっとよく理解できなかった。謎解き部分をもう少し丁寧に描いてくれると、バランスのとれた映画になったと思うけど……。

(原題:The Monkey's Mask)

2001年初夏公開予定 恵比寿ガーデンシネマ
配給:アスミック・エース
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