ザ・コンヴェント

2001/03/13 映画美学校試写室
40年前の女子修道院惨殺事件が現代によみがえる。
つくづくオバカで古風なスプラッタ映画。by K. Hattori


 1960年。ひとりの少女が女子修道院を襲い、ショットガンで尼僧や神父を蜂の巣にした上で建物に火をつけるという事件が起きた。それから40年たっても事件の起きた修道院跡地は廃墟のままで放置され、町の学生たちによる絶好の肝試しスポットになっていた。大学生のクラリッサは恋人や友人たちと一緒に、深夜この心霊スポットを探検することになる。だがちょうど同じ頃、廃墟の別の部屋では怪しげなオカルトマニアが、悪魔召還の儀式を行おうとしていた。この世に呼び出された悪魔は建物を完全封鎖。儀式に参加した女たちに乗り移り、建物に残る学生たちを次々に襲って喰い殺す。殺された学生たちも悪魔化して、廃墟の中は悪魔だらけ。クラリッサはなんとか廃墟を脱出しようとするのだが……。

 アメリカの若い映画監督マイク・メンデスが製作した、低予算のB級ホラー映画。『スクリーム』や『ラストサマー』の成功もあって、アメリカでは学園ホラー映画が大流行。しかしこの映画は『スクリーム』系の洗練されたホラー映画ではなく、'80年代に流行った“スプラッタ・ムービー”の伝統を色濃く引き継ぐ低予算の血みどろ映画。僕はサム・ライミの『死霊のはらわた』を思い出してしまいました。とにかく作りがチープ。しかしそれがじつにいい味を出してます。ひたすら観客を楽しませようとする作り手のサービス精神が、スクリーンからひしひしと伝わってくる感じがして好感が持てるのです。

 物語には大きな破綻があります。しかし「そんなこと構いやしない!」とでも言わんばかりに、物語を強引に進めていくだけの馬力がこの映画にはある。辻褄の合わない物語の裂け目がポッカリと暗い口を開けていても、それを無理矢理乗り越えていく図々しさがある。作り手が完全に確信犯なのです。この馬鹿馬鹿しさと無邪気さは、最近のホラー映画ではとんとお目にかかれなかったもの。修道院がなぜゾンビだらけになるのか、これを放置するとこの世界にどんな危険があるのかなど、事件の背景はまったく語られることがない。でも面白ければそれでいいのです。映画を全部観終わった後で「あそこがおかしい」と言うのは後知恵の屁理屈。映画を観ている最中に「どうも腑に落ちない」と思うのは野暮というもの。スクリーンに映し出される凄惨な殺戮シーンを眺めながら、「ガハハハ、馬鹿じゃ〜ん」と笑っているのが、この映画の一番正しい鑑賞態度ではあるまいか。

 『死霊のはらわた』ではケチャップやおかゆが特殊メイクの材料になっていたけれど、この映画では蛍光インクや蛍光色のペンキがメイクの材料になっている。薄暗い廃墟の中で、ド派手な蛍光色の血しぶきが噴水のように撒き散らされる様子はかなりハデハデ。これは今までにないスプラッタ描写で、たぶん今後も誰ひとりとしてこれをマネする人は現れないと思う。だってヘンだもん。

 タイトルの『ザ・コンヴェント』とは女子修道院という意味の原題(英語)を、そのままカタカナにしたもの。この安易な姿勢は、この映画に一脈通じるかもね。

(原題:The CONVENT)

2001年陽春公開予定 シネ・アミューズ(レイトショー)
配給:アルバトロス・フィルム
ホームページ:http://www.albatros-film.com


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