バンパイアハンターD

2001/03/12 日本ヘラルド映画試写室
菊池秀行原作の人気シリーズをアニメ映画化。
英語吹替で日本語字幕入り。by K. Hattori


 菊池秀行の人気小説シリーズで、10年ほど前にはOVAとして映像化もされている作品の劇場版。監督の川尻善昭は同じ菊池秀行原作の『妖獣都市』をOVA化してマニアを唸らせた人だそうで、国内外に多くのファンがいるという。今回の映画版は膨大な原作の中からシリーズ3作目の「D−妖殺行」を映像化したもの。これはゲームにもなっているそうだから、原作の中でもかなり人気があるものなのかもしれない。

 物語の舞台は遠い未来。“貴族”と呼ばれていた吸血鬼(バンパイア)たちの人間界支配が最終戦争によって破綻し、ハンターと呼ばれる一部の人間たちは地上に残った貴族たちを次々に処刑して行く。ハンターの中でももっとも腕が立つのは、貴族と人間の混血である“ダンピール”。彼らは貴族と人間それぞれの長所と短所を持ち合わせている。この映画の主人公“D”も、貴族の父と人間の母の間に生まれたダンピールだ。そんな彼のもとに、貴族に誘拐された荘園主の娘を救出してほしいという依頼が届けられる。もし貴族の毒牙にかかって娘が吸血鬼になっていたのなら、その時は娘を殺してほしいというのが条件だ。だがこの仕事を依頼されたのはDだけではない。バンパイアハンターのマーカス兄妹も同じ依頼を受けていた。誘拐された娘をめぐって、Dとマーカス兄妹のつばぜり合いが始まる。

 「吸血鬼ドラキュラ」や「吸血鬼カーミラ」などの古典的吸血鬼小説とその後継者たち、膨大な数に上るその映像化作品、さらに舞台設定を遠い未来にして異形のミュータントたちが登場するSF風の設定がブレンドされた独自の世界観。吸血鬼が不老不死であることや、人間の血を吸って生き延びること、血を吸われた人間が吸血鬼になること、吸血鬼が鏡に映らないこと、心臓を串刺しにすると命に終止符が打たれること、太陽光線を浴びると皮膚が焼けただれること、土に埋まって体力の回復をはかることなど、吸血鬼の設定は過去の映画や小説のそれを踏襲している。だが十字架やニンニクや水の扱いがどうなっているのか、やや不鮮明なところもある。このあたりは原作の読者には説明不要なのでしょうが、そうでない人にはちょっとわかりにくい。

 映画のテーマになっているのは、「永遠の命を得た者の苦しみと孤独」ということなのだと思う。シャーロットを誘拐した貴族マイエル=リンクは、彼女を愛するがゆえに、彼女に永遠の命の苦しみを与えることを躊躇する。貴族を狩る立場であるDもまた、自らの体に流れるバンパイアの血ゆえに、永遠の命の中で生き続ける孤独を噛み締めなければならない宿命を負っている。

 作画のレベルは高いと思うけれど、キャラクターのデザインにちょっとクセがあるので好き嫌いが分かれそうだ。原作のイラストを描いている天野喜孝の絵がベースだが、人物の表情の付け方に独特な固さがある。今回の試写はアメリカでも公開されるという英語版。人物の会話もすべて英語だし、タイトルロールも英語でした。

(原題:VAMPIRE HUNTER D)

2001年4月21日公開予定 ワーナーマイカルシネマズ
配給:日本ヘラルド映画
ホームページ:http://www.hunterD.com


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