フロム・ダスク・ティル・ドーン3

2001/03/09 シネカノン試写室
アメリカの作家アンブローズ・ビアスがメキシコで見たものは?
シリーズ第3弾は西部劇。これじゃ『BTTF』だ。by K. Hattori


 短編小説の名手として芥川龍之介を感嘆させ、警句集「悪魔の辞典」の作者としてもその名を知られているアンブローズ・ビアスは、1913年、70を越える高齢でただひとりメキシコに入りそのまま消息を絶った。当時のメキシコは映画『戦うパンチョ・ビラ』や『革命児サパタ』にも描かれた革命の動乱期。ビアスはメキシコに何を求め、どのような事情で姿を消すに至ったのか? メキシコでのビアスというミステリーは多くの人の興味を引くようで、'89年には『私が愛したグリンゴ』という映画も作られている。この映画『フロム・ダスク・ティル・ドーン3』も、やはりビアスのメキシコでの日々を描いた作品。この映画ではビアスがパンチョ・ビリャの革命軍に身を投じるためメキシコに向かったという設定になっているが、これはビアス本人のキャラクターというより、第一次大戦やスペイン内戦に積極的に関わったヘミングウェイあたりを下敷きにしているのかもしれない。伝記というより一種のファンタジーです。

 この映画に登場するビアスは、「その人知ってる!」という観客からの親しみやすさを武器に、観客の目に成り代わって不思議なメキシカン・バンパイアの巣窟を探検する役目を負っている。本当のところ、この人物がビアスという固有名詞を持っている必要なんてひとつもない。観客が感情移入できる人物なら、誰でもよかったのだ。今回の映画は西部劇。西部劇の主人公には、世間の基準で見た優等生より、世間の基準から一歩離れたアウトサイダーが似合う。この映画にはビアスと一緒に旅をする新婚の牧師夫妻が登場するが、これはご立派すぎて物語の主人公には似合わない。やはりビアス程度に世間に距離を置いた変わり者の方が、観客の感情移入を誘う。

 シリーズ3作目の本作は、映画の作りとしては1作目の『フロム・ダスク・ティル・ドーン』に一番よく似ている。牧師が出てくるのも1作目と同じだし、世の罪を知らない善良な乙女と、お尋ね者のアウトローが一緒に旅をするというのも同じ。こうした雑多な人々がメキシコの砂漠にある酒場に何も知らずに入り込むと、そこは血を好むバンパイアたちの巣窟。やがて酒場の入口の戸はがっちりと閉じられ、バンパイアたちのお食事タイムが始まるのだ。時代設定や人物の設定などは変えてあるが、これは『フロム・ダスク・ティル・ドーン』の3作目というより、1作目の舞台を20世紀初頭に移したリメイク作品と呼んでもいいような作品だ。

 面白さの点ではパート2よりも数段上。残酷描写が意味もなく派手だったりするのは「うげ〜」なのだが、これはもともとこのシリーズのコンセプトとして「バンパイア=ゾンビ」なのだから仕方がない。パート2ではバンパイアの設定がだいぶ吸血鬼よりになってしまったのを、この映画では再びゾンビ方面に引き戻した。

 酒場のバーテン役に三度ダニー・トレホが出演。そうか、このシリーズの主人公は本当は彼だったのね。ところで地獄のサンタニコっていったい何だ?

(原題:FROM DUSK TILL DAWN 3: THE HANGMAN'S DAUGHTER)

2001年4月中旬GW公開予定 銀座シネパトス
配給・問い合わせ:アミューズピクチャーズ
ホームページ:http://www.amuse-pictures.com/


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