ショコラ

2001/02/01 丸の内プラゼール(試写会)
ジュリエット・ビノシュ主演のチョコレートを巡るファンタジー。
監督はラッセ・ハルストレム。by K. Hattori


 『ギルバート・グレイプ』『サイダーハウス・ルール』のラッセ・ハルストレム監督作。1950年代のフランスを舞台に、保守的な田舎町にできた小さなチョコレート・ショップと町の人々との関わり合いを描く。教会を中心にした信仰共同体が、目新しい食べ物によって人間関係を解きほぐしていくというストーリーは、『バベットの晩餐会』にちょっと似ているかもしれない。ただしそれ以上にこの映画の方が、人間の頑なさや宗教に対して辛辣です。この映画の舞台になっている'50年代は、第2ヴァチカン公会議でカトリックの典礼などが改革される以前。映画の中で若い神父が立つ説教台は今も古い教会に行けば見られますが、今はほとんど使われることがないと思う。物語は四旬節に始まり復活祭の日に終わる、冬から春にかけての40日間の物語。この時間経過の中に、古い因習の中で死んでいた村の共同体が、生き生きと復活するという変化を重ね合わせている。どうせならもっと教会行事をふんだんに盛り込んでいけば面白かったのだろうけれど、この映画はそれよりむしろ、チョコレートが持つ異教的な要素、魔術的な要素を強調している。イースター前には教会行事が目白押しだから、そうしたものと主人公の店の様子を対比させていくと、物語はもっと深みがでてくると思うんだけど……。

 物語の舞台になる町は架空のものだけれど、ロケはフランスで行われている。舞台はフランス、登場人物も全員がフランス人という設定、でも映画の中で使われている言葉はすべて英語。それでもあまり違和感がないのは、出演俳優たちを欧州出身者たちで固めているからです。ヒロインのヴィアンヌ役はジュリエット・ビノシュ。その娘役は『ポネット』のヴィクトワール・ティヴィソル。レナ・オリンとピーター・ストーメアはスウェーデン出身。ジュディ・デンチ、アルフレッド・モリーナ、ジョン・ウッドはイギリス人。ヒュー・オコナーがアイルランド人。『巴里のアメリカ人』のレスリー・キャロンも顔を出している。『マトリックス』のキャリー=アン・モスはカナダ出身で、ヨーロッパで女優業をスタートさせたキャリアの持ち主だそうです。この映画の中で正真正銘のアメリカ人はケンタッキー出身のジョニー・デップのみ。彼は流れ者のヒッピーみたいな役。町の人間とは明らかに毛色が違う人間であることを表現するために、あえてアメリカ人の彼をキャスティングしたのでしょう。この配役は成功していると思います。

 バレンタインにチョコを送るのは日本だけの習慣のようだけれど、この映画の中ではチョコが愛のメッセージを伝える小道具として使われている。公開時期はバレンタインからだいぶずれてしまいますが、この映画を観ると、大好きな人に美味しいチョコをプレゼントしたくなるかもしれません。映画館の売店にチョコを置いたら売れるだろうなぁ。試写の後にも出口で来場者にチョコが配られて、僕はちょっと感激してしまいました。そういえばもうじきバレンタイン。イースターも控えてます。

(原題:CHOCOLAT)

2001年4月G.W.公開予定 丸の内プラゼール他 全国松竹東急系
配給:アスミック・エース、松竹


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