ミート・ザ・ペアレンツ

2001/01/22 UIP試写室
恋人の父親はCIAの凄腕尋問官だった。
デ・ニーロ版『花嫁の父』。by K. Hattori


 恋人へのプロポーズも済んで、いざ彼女の両親に挨拶しようとする時というのは、男性側にかなりのプレッシャーがかかるらしい。特に難物なのは、彼女の父親である。父親と娘婿候補生の間には、さまざまな珍事件が発生する。僕が以前聞いた話で一番傑作だと思ったのは、男性が彼女の実家まで挨拶に行ったら到着早々酒を振る舞われて酔ってしまい、それでも何とか早く「娘さんを僕にください」と言わなければという焦りと緊張感の中で、この男性はなんと恋人の父に向かって「娘さんとの仲を精算させてください!」と口走ったというのだ。本人がこの重大な言い間違えに気付くはずもなく、父親は激怒し、周囲は狼狽したという。そりゃそうだ……。

 シカゴの病院で看護夫をしているグレッグは、最愛の恋人パムにプロポーズする直前、彼女の家ではまず父親の許しを得なければならないことを知る。折しも彼女の妹が結婚することになり、グレッグもパムと一緒に彼女の実家へ。彼は何とかパムの父ジャックに気に入られようとするのだが、最初からトラブル続きで彼の印象は悪くなるばかり。何とか名誉挽回しようとしても、グレッグの行動はいちいち裏目に出てしまう。

 アメリカは世界でもまれな完全核家族の社会で、結婚も離婚も当人同士が決めればそれでよさそうにも思うのだが、「両親に祝福されて結婚したい」という恋人たちの願いは世界共通らしい。結婚を巡る家族とのドタバタは、スティーブ・マーチン主演の『花嫁のパパ』にも出てきたもの。冠婚葬祭のマナーは少しずつ違っても、結婚という人生の節目に立ち向かう前の期待や不安は、洋の東西を問わず同じなのかもしれない。

 彼女の父親ジャックが「人間嘘発見器」の異名を持つ元CIAのエージェントだったという設定や、家中のあちこちに監視カメラや盗聴マイクが仕掛けてあるという設定は面白い。ジャックを演じているのはロバート・デ・ニーロ。彼と対決する羽目になるグレッグを演じるのは、『メリーに首ったけ』『僕たちのアナ・バナナ』のベン・ステイラー。やることなすことすべてが裏目に出て事態を混乱させていくというキャラクターは、『メリーに首ったけ』を踏襲したものだと思う。監督は『オースティン・パワーズ』のジェイ・ローチ。

 アメリカでは大ヒットした映画だそうだが、僕はあまり面白いと思わなかった。主人公グレッグが彼女の父に気に入られようと苦し紛れの嘘やごまかしをするくだりに、まったく共感できなかったのだ。ユダヤ教徒のグレッグが食卓でデタラメな祈りをするのも、農場でネコの乳搾りをする話もまったく笑えない。「彼女の実家に行ったら父親が強烈な変人だった」という話のはずなのに、この映画ではデ・ニーロの変人ぶりがまだ中途半端だし、彼と対比されるべきベン・ステイラーにも「同じ状況では自分も似たことをするかも」という感情移入ができない。話の落ち着きどころとして、妙にベタベタしたところに持っていこうとするのも気になった。

(原題:Meet the Parents)

2001年陽春公開予定 日比谷映画他 全国東宝洋画系
配給:UIP


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