クリムゾン・リバー

2000/12/14 GAGA試写室
ジャン・レノとヴァンサン・カッセル主演の連続猟奇犯罪ミステリー。
後半があまりにも未整理。期待はずれだった。by K. Hattori


 『〈マスコミの皆様へ〉本作品は、その衝撃的なストーリーの秘密をご覧になる前の方に説明してしまうことをしないよう、製作者及び監督より希望されております。本作品を御紹介いただくにあたり、ぜひお守りいただけるようお願いいたします。』とプレス資料にでっかく印刷してあるのだけれど、僕はこの映画のどこに衝撃的なストーリーの秘密があるのかさっぱりわからなかった。最近この手の但し書きを書いたプレス資料が多いんだけど、これは『シックス・センス』以降の現象だと思う。ミステリー映画の結末をばらしてしまうのは問題だろうけれど、それは紹介する側の常識や良識の問題であって、お願いしてどうこうというものでもないと思うけどな。そもそもこの映画のように、すべての秘密が明らかになった後でも決着の付け方に釈然としないような映画の場合、『説明してしまうことをしないように』と言われても困ってしまう。他人に説明する前に、僕が製作者や監督からストーリーの秘密を説明してほしいよ。

 雪山の中で見つかったひとつの遺体。全裸のまま胎児のような姿勢で固く縛り上げられた被害者は、全身を鋭利な刃物で何ヶ所も切られ、両手首は切断されてバーナーで焼かれ、両目もえぐり取られている。しかもこれらの傷は生前に受けたもの。被害者は何時間にも渡って凄惨な拷問を受け、苦しみ悶えながらゆっくりと死んでいったらしい。被害者は地元にある名門大学の図書館司書。やがて付近の山の中から、もう1体の遺体が見つかる。やはり固く縛られた身体と、切り取られた手首、えぐられた両目。恐るべき連続猟奇殺人の発生だ。パリ警察から派遣されたニーマンス警視は、遺体に残された手がかりから犯人の動機を分析しようとする。同じ頃、大学町から200キロ離れた小さな町で、スキンヘッドによる墓荒し事件を捜査している若い刑事マックスがいた。荒らされたのは、20年近く前にトラックにひき殺された幼い少女の墓。同じ夜、その少女が通っていた小学校から彼女の記録がごっそり盗み出されている。別々の事件を別々に捜査していたニーマンスとマックス。ふたつの事件は、やがてひとつの事件へと合流して行く。

 低予算の人間ドラマが多いフランス映画にしては、破格の20億円を投じて製作された作品。監督のマチュー・カソヴィッツにしても、今まで監督してきた中で最大規模の作品だろう。しかしこの映画、あまり面白くない。面白くない最大の原因は、話がごたごたしていて全体像が見えにくいからだ。おそらくは脚色(原作の小説がある)の問題だろう。脚色したのは原作者のジャン=クリストフ・グランジェと、カソヴィッツ監督本人。具体的にどこがどうわかりにくいかを書くと、配給会社のお願いに違反してしまうので避けるけれど、ふたりの刑事が合流してから後の展開がさっぱりわからない。

 「フランス映画でもハリウッド映画みたいなものが作れるんだよ」という、フランス映画界の意気込みしか伝わってこない映画でした。ちょっと期待はずれです。

(原題:LES RIVIERES POURPRES)

2001年新春第2弾公開予定 スカラ座他 全国東宝洋画系
配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給


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