ふたりの男とひとりの女

2000/11/30 20世紀フォックス試写室
二重人格のジム・キャリーとひとりの女性の三角関係。
緩急自在のギャグに大笑い。by K. Hattori


 『メリーに首ったけ』のファレリー兄弟最新作であり、『グリンチ』で芸の不発を招いたジム・キャリーがその魅力をたっぷり振りまく爆笑コメディ映画。ファレリー兄弟とキャリーは『ジム・キャリーはMr.ダマー』で一度コンビを組んでいる旧知の仲。今回のキャリーは共演のレニー・ゼルウィガーとの息もぴったり。ぴったりついでに、彼女と結婚するのだというからめでたい。まぁハリウッドのことだから、いつまた別れてしまうかはわかりませんけど、神経質そうなローレン・ホリーと復縁する(一時そんな噂もあった)よりはお似合いのカップルになるのではないかと、映画の中でしか俳優を知らないくせに、無責任な映画ファンは声援を送るのである。

 ジム・キャリーが演じている主人公チャーリーは、いつもニコニコと周囲に愛想を振りまく陽気な警察官。しかし周囲との対立を避け、何でも丸く収めようとする彼の性格は単なる「お人好しのうすらバカ」として町の人からも軽くみられている。妻は黒人の運転手と駆け落ちし、誰が見ても運転手の子供だとわかる子供を3人もチャーリーのもとに置き去りにしてしまう。でもチャーリーは怒らない。怒りをすべて胸に秘めて、いつもニコニコ。ところがそんなチャーリーの怒りは、いつしか彼の心の中にハンクという別人格を作り上げる。温厚なチャーリーとは反対に、ハンクは徹底した乱暴者だ。そんな“ふたり”の前に、悪党に命を狙われている若い女アイリーンが保護を求めてくる。

 映画の見どころは、ジム・キャリーの二重人格演技。顔の筋肉がピクピクと引きつり、突如としてチャーリーがハンクに変貌するシーンは爆笑。ひとつの身体をチャーリーとハンクが奪い合い、『ファイト・クラブ』のエドワード・ノートン状態になるくだりなど、あまりの壮絶さに唖然呆然。他にもジム・キャリーがおかしな顔や動作で、徹底的に笑わせてくれるのは嬉しい。『グリンチ』に不満を感じた僕は、この映画で溜飲を下げました。これぞジム・キャリー。『メリーに首ったけ』でも炸裂していた下ネタギャグはここでも健在。殺し屋の襲撃から命からがら逃げてきたアイリーンがチャーリーの部屋で見たものにもクスクス笑ってしまうし、映画の後半にもとてつもない下ネタギャグのつるべ打ちがあって、お腹の皮がよじれるぐらい笑える。しかもこうしたギャグシーンが、後の展開にからむ伏線にしてあるあたりは作り手の頭の良さを感じてしまうのだ。

 チャーリーの3人の息子たちは最高におかしい。この3人だけを主人公にして、まったく別の映画が何本か作れそうなぐらいキャラが立っている。映画の終盤で突然登場し、クライマックスのいいところをさらうホワイティという登場人物も面白かった。こうした人物たちに比べると、悪役たちがやや類型的すぎるかもしれない。ヒロインのアイリーンも、レニー・ゼルウィガーが演じていなければここまで魅力的な人物にはなっていなかっただろう。でも面白い映画です。大いに笑いました。

(原題:Me, Myself & Irene)

2001年1月中旬公開予定 日劇プラザ他 全国東宝洋画系
配給:20世紀フォックス


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