超速伝説
ミッドナイト・チェイサー

2000/10/19 東京国際フォーラム映像ホール
イーキン・チェンが公道レースのヒーローを演じる青春ドラマ。
レースシーンは迫力十分。でもなぁ……。 by K. Hattori


 『欲望の街 古惑仔』シリーズと同じ、主演イーキン・チェン、監督アンドリュー・ラウ、脚本マンフレッド・ウォンによる暴走族映画。主人公のスカイは名家の一人息子として何不自由のない生活を送りながら、毎晩のように仲間とつるんで遊び回り、違法な公道レースに情熱を傾けている。スカイをライバル視するソンカイの挑戦を受けたスカイは、大金を賭けてレースに挑み、自分が勝ったらソンカイの脚を折ると宣言。予告通りレースに勝ったスカイは、金を払うというソンカイの脚を無情にも折ってしまう。刑務所に服役中だったソンカイの兄タイフンは、弟の復讐のためスカイに挑戦。だがドライバーとしての腕は、スカイよりタイフンの方が一枚も二枚も上手だった。スカイはレース中に事故を起こし、同乗していた恋人を死なせてしまう。

 物語の筋立てはシンプルで、レースシーンも迫力十分。母との確執。父親との絆。仲間との友情。そして恋。この手の映画に必要な要素は、すべて盛り込まれている。自尊心が強く自分の才能に溺れていた若者が、ある事件によって決定的に挫折し、周囲の人たちの励ましでそこから立ち直っていくと同時に、最後はライバルに勝つ。『トップガン』や『デイズ・オブ・サンダー』の公道レース版みたいなものだ。レースシーンは迫力があって、観ていて思わず手に汗握る場面も多い。日本のアニメを参考にしたというCG効果が、通常のカースタント映画以上の迫力を生み出している。時々やりすぎてゲーム画面みたいになってしまうのはご愛敬。

 ただし釈然としないところもある。主人公スカイの境遇や高慢で自分勝手な性格を表現するためなのだが、彼がかつて事故で小さな子供をひき殺した際、各界に強力なコネを持つ母親のおかげでおとがめなしだったという話はいかがなものか。この事故で自分自身も大けがを負ったスカイは、看病する恋人ケリーとの絆が深くなったことにしか思いが及ばない。彼は無謀なレースでそのケリーも失ってしまうわけだが、この時もケリーの祖母から「お金では買えない大切なものがある」と涙ながらに諭されても、それが何を意味するのかまるでピンときていないように思えるのだ。ここはスカイが殺した少年のエピソードと重なって、彼自身の大きな負い目を作る大切な場面。しかし映画の中では彼が警察から逃れることと、父親を探しに行くことが動機として先行してしまい、「罪を犯した」という負の側面が弱くなっている。この負債を彼がどうやって精算するのか? 映画を最後まで観ても、その回答は見あたらない。

 主人公を励ます少女リョンチー役に、『喜劇王』『星願 あなたにもう一度』のセシリア・チョン。いつまでたっても垢抜けしないところが、彼女の魅力だろうか。ちょっと泥臭い女優が、香港では好まれるのかもしれない。カレン・モク、アニタ・ユン、スー・チーなど、いつまでも垢抜けないところをチャームポイントにしている女優は多い。セシリア・チョンもその系統だろう。

(原題:烈火戦車2 極速傳説 THE LEGEND OF SPEED)


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