DEAD OR ALIVE 2
逃亡者

2000/10/17 東映第1試写室
哀川翔・竹内力コンビと三池崇史監督が再び組んだ!
可笑しい! 痛快! 哀しい! 傑作! by K. Hattori


 Vシネマのキングとも帝王とも呼ばれる2大スター、哀川翔と竹内力を共演させ、空前絶後、驚天動地、気宇壮大な内容で映画ファンの腰を抜かせた『DEAD OR ALIVE/犯罪者』のパート2。といっても続編というわけではなく、前作と同じ哀川翔と竹内力の主演で、前作と同じ三池崇史監督が演出を担当している別の物語になっている。前作を観ていなくても、この映画はイケル!

 南の島の孤児院で育ったシュウとミズキ。孤児院を出て流転の末、ミズキはプロの殺し屋になり、シュウはヤクザの幹部になる。ミズキはあるヤクザ組織の組長狙撃を依頼されるが、彼のスコープの中に見えたのは、ひとりの男がヤクザたちをつぎつぎに射殺する風景だった。ミズキは男の横顔には見覚えがあった。あれはシュウじゃないのか? やっぱりシュウじゃん! こうしてミズキとシュウは20年ぶりの再会を果たすのだ。

 故郷を失った男たちが異境の地で暴力の世界に身を投じるという、三池崇史監督お得意の世界。三池作品の多くで、主人公たちは故郷に戻ることなく異境の地で倒れる。この映画では主人公たちが簡単に故郷に帰ってしまうのだが、それが可能なのは彼らがもともとその土地にルーツを持たない孤児だからだ。故郷に見えるチブリ島も、彼らにとっては異境の地。ミズキとシュウは、最初から故郷と切り離されている。彼らはどこにも故郷を持たない。ミズキの心のふるさとは、「孤児」という境遇そのものにあるらしい。だからこそ彼は、仕事で得た報酬をすべて、世界中の恵まれない子供たちのために寄付してしまう。大人たちから保護を受けられない不幸な子供たちとつながることが、ミズキにとっての心の慰めなのだ。ヤクザの世界に足を踏み入れたシュウも、慰めを求めてチブリ島に戻ってくる。だがそこに彼の癒しはない。彼もミズキと共に、世界中の子供たちとつながる生き方を選ぶ。そうするしか、彼らは生きる方法がない。

 主人公たちの境遇や気持ちにはかなり「泣き」の要素が入っているのだが、この映画はそんな湿っぽさを笑いに転じさせることで、痛快な娯楽作品に仕上げている。頭髪を金髪に染め上げた哀川翔が、とにかく軽い。この軽さは哀川翔がもともと持っていたものだろうが、それにつられて竹内力も馬力のある機動性で飛び回る。主人公たちの軽さと、暴力描写のリアリズムや残虐性の対比。軽さの下に隠された不幸や悲しみ。子供向け劇団のショーにミズキとシュウが加わる場面が、この映画の最大の見どころ。ぬいぐるみをかぶっておどける哀川翔と竹内力というのもインパクトがあるが、それと暴力組織の抗争を対比させることで、衝撃度は倍加する。

 脚本は三池監督と既に何本も仕事をしているNAKA雅MURA。アドリブと見分けがつかないような自然な会話が、じつにうまい。「ちんこ棒」のエピソードなんて最高におかしい。主人公ふたりが天使になって暴れ回るくだりは、『ドグマ』の堕天使二人組より何十倍も痛快だ。前作と違った意味で、この映画は傑作になっている。


ホームページ
ホームページへ