ことの終わり

2000/07/18 SPE試写室
G・グリーンの「情事の終わり」をニール・ジョーダンが再映画化。
真相が明らかになってからが長いかも。by K. Hattori


 グレアム・グリーンの小説「情事の終わり」の再映画化。この小説は1954年にデボラ・カーとヴァン・ジョンソン主演で映画化されているが、今回の主演はレイフ・ファインズとジュリアン・ムーア。監督は『クライング・ゲーム』『マイケル・コリンズ』のニール・ジョーダンだ。主人公である人気作家モーリス・ベンドリックスは、取材対象として知り合った高級官僚ヘンリー・マイルズの妻サラと恋に落ちる。だが戦争の中で始まった不倫関係は、ある日突然終わってしまう。サラはベンドリックスの前から去ってしまった。それから2年後。ベンドリックスはヘンリーと再会し、サラに新しい恋人ができたらしいという話を聞く。ベンドリックスは探偵を雇い、サラの行動を調査し始めるのだが……。

 映画『第三の男』の原作者でもあるグレアム・グリーンにひっかけて、プレス資料には以下のような但し書きがある。『ご注意とお願い/「クライング・ゲーム」のニール・ジョーダン最新作となります本作にも、また新たなる謎〈“第三の男”とは誰なのか?〉が用意されております。これからご覧になられる方々のためにも、もうご覧の方々は是非ともこの〈こと〉の答えを秘密として頂きたくお願い申し上げます。』そんなわけでこの映画の肝心な部分についてはまるで書けませんが、メモ代わりに思ったところを簡単に書き記しておきます。

 映画の前半はミステリー風の語り口。謎は3つある。ひとつはベンドリックスとサラの間に、一体どんな過去があったのかということ。これは早々に明らかにされる。もうひとつの謎は、サラとベンドリックスがなぜ別れてしまったのかという真相。最後が、サラが現在逢い引きを重ねている新しい恋人(第三の男)は一体誰なのかということだ。この3つの謎の中では、最初の2つの真相を明かすくだりはなかなか面白く見られる。ただし最後の謎については、僕はあまり釈然としなかった。謎そのものの質や意外さという点では非常にユニークなものだと思うが、それが明らかにされたときの衝撃や鮮やかさという点で、この一番肝心の謎がもっとも見劣りしてしまう。これは謎の内容と言うより、語り方の問題かも。

 ひとりの女性を愛し、愛するがゆえに恨むという主人公ベンドリックスの人物像は、『イングリッシュ・ペイシェント』や『オネーギンの恋文』に通じるレイフ・ファインズのハマリ役。しかしジュリアン・ムーアはサラ役として適当だったのだろうか。この女優は「タフな姉ちゃん」という印象が強すぎて、サラの役には不似合いだったようにも思う。レイフ・ファインズとの濃厚なベッドシーンを見ていても、『ブギーナイツ』のポルノ女優を思いだしてしまって「なんか違うな」と思ってしまった。ヘンリーを演じたスティーブン・レイも悪くないけれど、レイフ・ファインズと並んだときの絵づらが悪い。もう少しカッチリしたタイプの俳優の方が良かったかも。意外に良かったのは、子連れ探偵を演じたイアン・ハート。いいコメディリリーフです。

(原題:The End of Affair)


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