死者の学園祭

2000/07/18 東映第1試写室
深田恭子が親友たちを殺した学園内の陰謀に立ち向かう。
話は面白いが主演の深田恭子が固い。by K. Hattori


 赤川次郎原作、深田恭子主演の学園ミステリー。監督は田中麗奈主演の『はつ恋』が好評だった篠原哲雄。カトリック系の学校として長い伝統を持つ手塚学園で、演劇部の女子生徒が屋上から飛び降りて自殺するという事件が起きた。彼女の遺作となった新作「青い瞳の天使」を上演すべく、主人公の結城真知子は学園長に直談判。演劇部顧問・倉林の尽力もあって、「青い瞳の天使」の稽古が再会された。だがその後、この劇の制作に関わった女子生徒たちが次々に謎めいた死を遂げる。これは事故か、それとも自殺か。80年前、学園の中で実際に起きた悲恋物語に着想を得たという「青い瞳の天使」に隠された秘密。自殺した台本の作者が残した旧約聖書・民数記からの引用に隠されたメッセージ。謎めいた転校生・神山英人は何を知っているのか。数々の謎を残したまま、「青い瞳の天使」開幕のベルが鳴り響く。

 ミステリー映画としては、伏線の張り方、謎の解き明かし方、最後のどんでん返し、大団円まで、パターン通りとはいえまずまずの出来だと思います。しかしヒロインを演じた深田恭子の演技があまりにも固く、彼女の芝居が映画の中から完全に浮き上がっているところがいくつもある。彼女は人気タレントだから、映画の中で彼女が泣いたり笑ったり怒ったり恐がったりする百面相を見せられればファンは十分満足だと思いますが、この映画の中の彼女はいつも顔の筋肉がこわばっていて、100%の笑顔も、100%の泣き顔も見ることができない。主人公に存在感さえあれば、演技がヘタクソでも映画なんて成立してしまうものです。でも残念なことに、この映画の中で深田恭子は自分の魅力を100%は出し切れていないと思う。かなり難しい役で、気持ちを表現するのは難しかったとは思うけれど、たとえ下手くそでも演技にもっと元気があると、この映画全体の勢いが底上げされて、これより面白くなると思うんだけど。この映画の中では、深田恭子の存在感が乏しすぎる。だからクライマックスの対決なども盛り上がらない。白々しい素人芝居でもいいからゲラゲラ笑ったり、シクシク声をあげて泣いたりしてほしい。最後の対決ではギャーギャー声を出して暴れ回ってほしかった。

 主人公の周囲で次々と事件が起きていくというエピソード構成ですが、主人公そのものの存在感が希薄なので、エピソードがそれぞれバラバラに見えてしまう。殺された少女たちがは全員が親友同士で、4人組の内3人までが変死するのだから、ひとり残された主人公は親友を失った悲しみと共に、「次は自分が殺される」という危機感も感じるはず。この映画では、その危機感がうまく表現できていないような記がした。「次は私だ」という気持ちを観客も共有できれば、彼女と父親の関係、彼女が慕う教師との関係、転校生との関係などが、それぞれ今以上に大きな意味を持ってくるだろうに。

 藤原竜也主演の『仮面学園』と同時上映。内容的には『死者の学園祭』の方がバランスが取れているかも。


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