★とびだせ★
2000年夏の
角川まんが大行進

2000/07/10 東映第1試写室
夏休みの子供向け映画3本立ては『おじゃる丸』がメイン。
大人が観るにはちょっと眠くなるかも。by K. Hattori


 NHKで放送されている人気アニメ「おじゃる丸」の劇場版『映画・おじゃる丸/約束の夏 おじゃるとせみら』に、テレビ東京系で放送されているアニメ『モンコレナイト』の劇場版、コミック原作の実写ファンタジー映画『フシギのたたりちゃん』を合わせた3本立て。以下それぞれの映画について簡単な感想。

 「おじゃる丸」は何しろ月曜から金曜まで毎日放送しているアニメなので、僕も何度かテレビで見たことがある。今回の劇場版はオリジナルのキャラクターが登場するとはいえ、基本的にはテレビと同じ世界をそのまま劇場のスクリーンに移植したもの。劇場版ではじめてこのアニメに触れる人がいることを考慮して、主人公おじゃる丸がなぜ現代日本に現れたのか、おじゃる丸を追いかける小鬼たちが何を目的としているのかなど、物語のベースになる部分を改めて説明しているのはありがたい。じつは僕も、このあたりはまったく知りませんでした。

 異世界から小さな子供がやってきて、現代の普通の子供たちと友達になるという設定は、「おばけのQ太郎」「忍者ハットリくん」「ドラえもん」などの藤子作品と同じ、子供向け作品の黄金パターンです。もっともこれは、藤子作品の専売特許というわけではない。「魔法使いサリー」なども同じパターンだもんね。そのルーツは「雪女」や「鶴女房」など、日本の民話にあるのかもしれない。同じような異界通婚譚は中国や東南アジアにもあるから、こうした異世界との交流という物語は汎アジア的な広がりを持っているのだ。そういう意味では、「ドラえもん」や「おばQ」などが中国や東南アジアでも受けているというのは必然なのかもしれない。たぶん「おじゃる丸」もアジア受けするキャラだと思う。今回の映画は、おじゃる丸がセミの精“せみら”と友達になるというお話。動物の精が人間になるというのも、いかにもアジア的。このアニメがどこか懐かしいのは、テーマ曲を北島三郎が歌っているからだけではないのです。

 異世界との交流という意味では、今回の3本立ては全部同じようなテーマを持っていると言える。『モンコレナイト』はモンスターたちの住む六門世界に行く話だし、『フシギのたたりちゃん』も我々の日常とは違う異世界が舞台になっている。でもこの2作品は『おじゃる丸』ほど地に足がついているような感じがしない。『モンコレナイト』のルーツは欧米のファンタジー小説や映画にある「剣と魔法の世界」だろうし、『フシギのたたりちゃん』もその独自な世界観はシュワンクマイエルの『不思議の国のアリス』やジュネの『ロスト・チルドレン』を下敷きにしているように思える。つまり借り物の世界なのです。これがもっとこなれてくると、宮崎駿の『天空の城ラピュタ』みたいになるのかもしれませんが、なかなかそこまで到達するのは難しい。

 映画作品としては『フシギのたたりちゃん』の導入部に魅力を感じた。背景を全部作り物にして、人物を合成してしまうというのは面白い。でも話がイマイチです。


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