バッドムービー

2000/06/28 映画美学校試写室
韓国の若者たちのモラルなき生き方を赤裸々に記録。
観ていて胸がムカムカするぐらいリアル。by K. Hattori


 日本人の中には、韓国がすごく立派な国だと思っている人たちがいる。曰く、韓国は儒教の国なので、国民の道徳意識が高く、非常に礼儀正しい。ついでに言えば、韓国にはキリスト教徒も多い。教育水準も高くて、非常に勤勉である。長い歴史と伝統に裏打ちされた独特の文化を尊重している。例えば人気マンガ「美味しんぼ」に登場する韓国のイメージというのは、いつもそうしたものだ。こうした「立派な韓国」というイメージが強調されるのは、かつて日本の言論界を支配していた「北朝鮮(北朝鮮民主主義人民共和国)=優秀な指導者に恵まれた地上の楽園」「韓国=米国傀儡の軍事独裁国家」という馬鹿げた評価が覆された結果だろう。その反動で、今は韓国が素晴らしい国とされている。さらにこうした評価は、「その素晴らしく立派な国に、昔の日本はひどいことをしました」という具合に続く。馬鹿な話だ。

 韓国が儒教の国であることは否定しないけれど、儒教的な道徳は既に過去のものとなっている。韓国で女性の整形手術が流行しているというニュースを聞いたのは、もう15年以上前の話だ。「身体髪膚、これを父母に受く、敢へて毀傷せざるは孝の始めなり」と孔子は言っている。親からいただいた健康な体に平気でメスを入れるというのは、明らかに「孝」の道徳に反しているのだ。韓国も日本と同じで核家族化が進み、老人問題が深刻化しているそうだ。その中で『ナヌムの家』のような映画も作られる。これは従軍慰安婦問題を扱った映画であるかのように“誤解”されているが、じつは深刻化する韓国の老人問題を記録した映画だと僕は解釈している。儒教道徳の残っている国では、老人問題など発生するはずがないのだ。韓国で老人問題が発生しているということは、すなわち韓国社会が儒教道徳という枠組みを失って、迷走し始めていることを示している。

 そんな中で登場するのが『バッドムービー』だ。これはひどい映画である。中身は知恵もテクニックもない韓国版『KIDS』だと思っていただければよい。ラリー・クラークが10代の少年少女たちと共に生活しながら写真を撮影し、映画を作ったように、この映画の監督チャン・ソヌも半年間を若者たちと遊び回ることに費やし、その後3ヶ月かけて映画を作ったという。映画の中では韓国の10代の若者たちがありとあらゆる社会的な規範から離れて自由気ままに振る舞う様子を、ドキュメンタリーともフィクションともつかないタッチで描いている。暴行、傷害、万引き、窃盗、たかり、恐喝、強盗、乱交、輪姦などの胸くそ悪くなるような行為が、2時間近い映画の中にまんべんなく散りばめられているのだ。ひとつひとつのエピソードは短いが、登場人物は少しずつ重なり合っている連作風。どのエピソードも、登場する若者たちの実体験をもとにしているという。ぜひとも「美味しんぼ」の原作者・雁屋哲あたりに観ていただき、これでも「韓国の若者は立派だ」と無邪気に韓国礼賛していられるか反応が知りたくなるような映画です。

(英題:BAD MOVIE)


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