劇場版ポケットモンスター
結晶塔の帝王

2000/06/26 東宝第1試写室
アメリカでも大ヒットした劇場版ポケモンの第3作目。
今度の映画は大人の鑑賞にも堪える。by K. Hattori


 アメリカをはじめ世界各国で大ヒットした『劇場版ポケットモンスター』の3作目。このシリーズは『クレヨンしんちゃん』や『名探偵コナン』に比べると“お子様度”が高く、大人が観るのはちょっと辛い部分もあるように思うのだが、今回は過去2回の劇場版に比べても、大人の観賞に堪え得る内容に仕上がっていると思う。特に短編にはそれが顕著。今までは試写室から逃げ出してしまいたくなるぐらい幼稚な内容だった(それが悪いわけではない)のだが、今回はお話に山あり谷ありで、最後まで飽きずに観ることができる。エンディングで酒井法子と竹中直人が歌うテーマ曲「ともだち記念日」も感動的で、併映の短編作品として文句なしの仕上がりだ。

 短編のほのぼのムードに対して、長編はいつもシリアス。今回は幻のポケモン(映画に出てくるのはいつだって幻のポケモンだ)アンノーンとエンテイが活躍する、SFタッチのファンタジー。古代遺蹟で発見されたアンノーウに関する碑文を解読するため現地に向かったシュリー博士が行方不明になり、一人娘のミーだけが広大な屋敷に残される。助手が持ち帰った、今は博士の遺品となった発掘品の一部。ミーがそれを握りしめると、古代の遺物は不思議な光を発して宙に舞い上がり、幻のポケモン、アンノーンが蘇る。巨大なエネルギーは建物や周囲の環境を結晶化させ、少女の願いのままに別のポケモン、エンテイも現われる。シュリー博士と旧知の仲であるオーキド博士とサトシの母も現地入り。偶然その地を訪れていたサトシたちと合流する。テレビでサトシの母を見たミーは「わたしにもママが欲しい」とエンテイにおねだり。ミーの理想化した父を演じるエンテイは、結晶の屋敷を抜け出してサトシの母をさらう。

 前作『幻のポケモン ルギア爆誕』でもメカの描写に使われたCGだが、今回は空中を乱舞するアンノーンの描写に威力を発揮。さらに屋敷が結晶化し、それが少しずつ外部に広がって行くモーフィングにも、CG技術が存分に使われている。こうしたシーンを手描きで表現するのは至難の業。CGがあってこその効果だとは思うが、まだセル画との馴染みはいまひとつ。しかし今回は人物以外ほとんどすべてがCGという場面も幾つかあり、試写室の大画面や贅沢な音響効果(dts)との相乗効果で、かなりの迫力を生み出していた。

 物語をサトシたちレギュラーの主人公たち側から見ていたのでは、これはどうしようもなく子供向けのストーリーだ。しかし僕のような大人の観客は、自分がミーの夢によって生み出された虚像であると知りつつ、それでもミーにとって理想の父であろうとするエンテイの健気さに胸を打たれるだろう。ミーのわがままをすべてかなえようとするエンテイに対し、「そんなのは間違ってる」と正論を述べるサトシたち。だが「間違っていてもいい」のだ。エンテイは自らの存在意義を賭けて、サトシたちと戦う。声をあてているのは竹中直人。短編のエンディングもいいが、こちらの演技もなかなかでした。


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