ミュージック・オブ・ハート

2000/06/05 松竹試写室
物語は『オーケストラの少女』と『陽のあたる教室』を足したもの。
これが実話だというのだから驚くし感動もする。by K. Hattori


 こんな映画がある。若い頃はクラシックの音楽家を目指しながらも、結婚と子育てに追われて夢を挫折させた主人公が、教師として大勢の子供に音楽を教えることに喜びを見出していく。クライマックスは教え子一同がステージ上に勢揃いしての演奏シーン。これは『陽のあたる教室』です。もう1本別の映画。一流の技術を持ちながらも資金難で存続が危うくなったオーケストラを救うため、世界的に有名な音楽家がコンサートで彼らと共演する。これはディアナ・ダービン主演の『オーケストラの少女』だ。『ミュージック・オブ・ハート』は、この2本の映画を足したようなお話。これがフィクションなら「はいはい、感動的な音楽映画を2本くっつけて話を作ったのですね」で終わってしまうんだけど、これが実話だというから驚いてしまう。

 主人公はロベルタ・ガスパーリは、女手ひとつで二人の息子を育てながら、スラムにある公立学校で子供たちにバイオリンを教えている。最初は50人の生徒から始まった教室も、10年後には3つの学校で150人を教えるまでに拡大し、それまでに教えた生徒の数は全部で1400人以上。しかしそんな教室も、市の教育予算削減のあおりを食って閉鎖が決まってしまう。教室を存続させる財源を確保するため、ロベルタはマスコミに訴え、有名音楽家を招いてチャリティー・コンサートを開催することを思いつく。ゲストとして招かれたのは、イツァーク・パールマン、アーノルド・スタイン・ハートといった一流のクラシック演奏家たち。アイザック・スターンの尽力もあって、会場は“クラシックの殿堂”カーネギー・ホールに決定。一流音楽家に負けない演奏を披露すべくロベルタは子供たちを特訓し、1993年に開催されたコンサートは大成功する。

 監督は『スクリーム』シリーズのウェス・クレイヴン。原作はロベルタたちのカーネギー・ホール・コンサートを取材したドキュメンタリー映画『スモール・ワンダーズ』。アカデミーのドキュメンタリー映画賞にノミネートされていたこの映画を観て、クレイヴン監督は映画化を決めたという。主人公ロベルタを演じているのはオスカー女優のメリル・ストリープで、彼女はこの作品でもオスカー候補になっている。実在の有名ミュージシャンはすべて本人が出演。歌手のグロリア・エステファンが同僚教師の役で映画初出演しているのも見ものだ。

 映画としてはかなりぎこちない部分もあって、中でも映画前半で主人公ロベルタの性格がネガティブなものに見えてしまうのはどうかと思った。夫に去られてメソメソ泣いている一方で、別の男に結婚を迫っているように見えてしまう。このあたりはもう少し整理できたと思うけどな。でもどんなに映画として弱いところがあっても、僕はこれが「実話だ」という部分に感動してしまうわけです。僕は特にアメリカびいきというわけではないのですが、こういう映画を観ると「アメリカ人は素晴らしい!」と思ってしまう。単純だね。

(原題:MUSIC OF THE HEART)


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