アメリカン・パイ

2000/05/29 日本ヘラルド映画試写室
卒業までに童貞とオサラバすると誓った高校生4人組の作戦は?
10代の頃の気持ちを思いだしてしまいました。by K. Hattori


 童貞性や処女性に意味があると思っているのは、古くさい性道徳を振り回す一部の大人と、童貞であり処女である当人たちだけだ。初体験を済ませて早く大人になりたいと願うのは、結局のところ童貞性や処女性に大きな価値を置いていることの裏返しでしかない。いざやることを済ませてしまえば、「べつにどうってことないじゃねぇか」ということに気づくものです。童貞や処女とおさらばしたからといって、人間に急に思慮分別がつくわけではない。でも思春期の男の子や女の子はセックスにすごく興味があるわけだし、童貞や処女を失うことがある種の通過儀礼になっているのも確かだ。通過儀礼を済ませてこそ、その意味のなさに気づくことは多い。

 この映画に登場するのは、童貞のまま卒業を間近に控えた高校生4人組。周囲の同級生たちは次々に経験を住ませて「男」になっているというのに、自分たちだけはいつまでも「男の子」のまま。高校最後の思い出に、せめて1度は女性としておきたい! 4人は3週間後に迫ったプロムを目標に、なんとか童貞生活に終止符を打とうとするのだが、行く手には数々の試練が待っていた。

 セックスに対する妄想で頭と下半身が爆発寸前の高校生たちを描いたコメディ映画で、セックスを目の前にする平常心を失ってしまう思春期の男心をじつに見事に描いています。エピソードのひとつひとつは「そんな馬鹿な!」というものですが、そこに至る心の動きがリアルに活写されていて「その気持ちはわかる!」と膝をたたいてしまうのです。つき合っている女の子がなかなかセックスさせてくれないとふてくされる男とか、自信過剰がアダとなっていつも女性に振られてしまう男の純情とか、千載一遇のチャンスを若さゆえの焦りでフイにしてしまった男とか、用意周到な作戦を巡らせて実践がともなわない奴とか、登場する男の子たちはこの年頃にありがちなタイプをそれぞれ代表しています。

 話そのものはよくある青春セックス・コメディですが、脇役までエピソードの目が行き届いていてダレるところがない。基本的に「男の子映画」なので、同年輩の女性たちが処女性についてどう考えているかという点にはあまり触れられていませんが、物語を男の子中心に進行させているのだからこれはこれでOKです。ミーナ・スバーリ、タラ・リード、ナターシャ・リオンなどが、充実したエピソードを提供していますしね。

 この映画が面白いのは、「初体験を済ませて大人になりたい」という主人公たちの思いと、高校を卒業してそれぞれが別の進路に進んでいくという人生の節目がうまくクロスして、通り過ぎて行く青春期のエピソードとして上手にまとめられているからです。初体験を済ませたからどうこうというわけでもないのですが、彼らはこの一時期を通して、人生の他の時期では得られない貴重な体験をすることになるのです。

 それにしてもジムの二連射には大いに笑わせてもらいました。いや〜ぁ、若いってすごいなぁ。

(原題:AMERICAN PIE)


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