エルモと毛布の大冒険

2000/05/18 SPE試写室
人気番組「セサミストリート」のキャラが総出演する映画版。
これはマペット版『オズの魔法使』だ。by K. Hattori


 現在もNHKで放送されているアメリカの子供向け教育番組「セサミストリート」の劇場版。主人公はエルモだが、ビッグバード、クッキーモンスター、オスカーなどの人気キャラクターが総出演。内容は子供向けですが、番組同様、大人から子供まで楽しめるエンターテインメント作品になっています。行方不明になったお気に入りの毛布を追いかけて、エルモが大冒険をするという邦題通りの物語。舞台はセサミストリートから、オスカーのゴミ缶の中を通ってオスカーの故郷“グラウチランド”へ。そこにはハックスリーという悪者がいて、人からいろいろなものを盗んで自分のものにしてしまう。エルモの毛布もハックスリーの手に渡ってしまうが、エルモは何としてでもそれを取り戻そうとがんばる。

 登場するキャラクターは「セサミストリート」だけれど、映画のベースにあるのは往年の名作『オズの魔法使』だと思う。現実の世界で周囲にさまざまな不満を持っていた子供が、異世界での冒険を通して周囲と和解する様子をミュージカル形式で描くところが共通していますし、ハックスリーのせこい悪役ぶりは『オズ』に登場する悪い魔女にそっくり。悪役の手下たちもいい加減にウンザリしていて、最後には主人公が悪役に勝利することを喜ぶというあたりも同じです。ハックスリーの乗るガラクタめいたヘリコプターや、奪ったものにことごとく「MINE(俺のもの)」というスタンプを押す機械などは、オズ大魔王の宮殿にあるイリュージョンや気球を連想させます。エルモと毛布の関係は、ドロシーと犬のトトの関係とダブってくる。もちろんこの映画は『オズの魔法使』を原作としているわけではありませんし、話の筋立てもだいぶ違う。でも作り手側の原風景として、映画『オズの魔法使』があるのは間違いないと思う。

 TV版の「セサミストリート」でも、大物のゲストスターが登場する場面は売り物のひとつ。この映画版でもそうした「セサミストリート」の伝統を踏まえ、ハックスリー役にブロードウェイ出身のマンディ・パティンキンを配役。パティンキンは舞台で鍛えた喉をたっぷりと聞かせてくれます。もうひとりのゲストは、物語の本筋とはほとんど関係なく唐突に登場するヴァネッサ・ウィリアムズ。彼女の役柄はグラウチランドのゴミの山に住む“クイーン・オブ・トラッシュ(ゴミの女王)”。『イレイザー』や『ダンス・ウィズ・ミー』で女優としても映画出演している彼女が、ゴミ山の上で歌いまくるのだから笑っちゃいます。でも本人は楽しんでるみたい。

 登場するマペットは基本的にどれも指人形なので、「セサミストリート」では頭のてっぺんから足のつま先までが画面に登場することはない。この映画版ではデジタル合成技術を使って、多くのマペットたちの全身を画面に登場させています。マペットたちが2本の足で道を歩いている場面を観ただけでも「これはTVとは大違いだ」と思わせるんだからすごいかも。久しぶりに「セサミストリート」が見たくなっちゃいました。

(原題:The Adventures of ELMO IN GROUCHLAND)


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