ピンチランナー

2000/05/16 東映第1試写室
人気タレント・モーニング娘。の初主演映画はひどいありさま。
おそらく今年のワーストワンはこれに決定。by K. Hattori


 僕はほとんどテレビを観ないので、モーニング娘。と聞いてもあまりピンと来ない。ワイドショーは観ているので、彼女たちが参加した駅伝の様子を映画の中でそのまま使うという話は聞いているし、後から参加した数人のメンバーのために追加撮影が行われたという話も、駅貼りのポスターが盗まれたという話も知っている。しかしこの映画、今週末(5月20日)から公開だというのに、マスコミ試写は15・16・17日の3日間のみ。関係者以外ほとんど誰も映画を観ていないまま、話題性だけが先行する形で映画が公開されることになる。もっともこの手の映画は、どうせタレントのファンしか観に行かないのだろうから、映画の中身が面白かろうがつまらなかろうがどうでも構わないのかもしれない。ジャニーズJr.が主演した『新宿少年探偵団』も、SPEEDが主演した『アンドロメディア』も、映画としてはひどくつまらなかったけれどヒットしたではないか。おそらくモーニング娘。主演のこの映画も、日本中でそれなりの観客動員実績を作るだろう。

 モーニング娘。というグループは構成メンバーが短期のうちに次々変わって行くらしい。だから彼女たちの出演映画を作った場合、即座に公開しないと顔ぶれが変わって素材の鮮度が失われてしまう。そういう意味では、映画製作の様子をワイドショーで時々刻々と報道し続けたこの映画の“ライブ感”には意味があるのかもしれない。たとえ内容がつまらなくても、観客のほとんどはタレントの顔さえ出ていればそれでOKなのだろう。劇場公開の1週間ほど前に映画を完成させ、そのままマスコミにもほとんど観せることなく直接全国の劇場にフィルムを配給してしまうというこの映画は、その鮮度だけが命なのだ。こんな映画、プロモーションに何ヶ月もかけたってまったく無意味です。タレント命。ファンが「映画を撮っていた」という事実を忘れないうちに、「どんな映画ができたのだろう」という期待感が高まっているうちに、とにかく映画を作って観せてしまう作戦です。

 映画としてはひどく出来が悪いです。登場人物が多いこともあって、それぞれのエピソードが薄い。しかも類型的で紋切り型の表現ばかりが目立つ。出演者たちの台詞はぎこちないし、物語の展開も古くさい青春映画の醜悪なパロディさながらです。とにかく映画を観ていて、唸らされるような場面がただの1ヶ所もない。観客はタレントのファンだから彼女たちさえ出ていればいいのでしょうが、タレントに興味のない僕はこの試写が苦痛でしょうがなかった。映画の中で彼女たちが「つらいときはつらいと言っていいんだよ!」と叫んだとき、僕は小さく「こりゃつらすぎる」と呟いていました。

 話題になった駅伝シーンは、なんとビデオ撮りです。劇中のクライマックスですから、ここさえ盛り上がれば何とか映画としての満足が得られたかもしれないのに、全体にモヤがかかったようなビデオ特有のネムイ画質にはガッカリした。まったくひどい映画です。


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