名探偵コナン
瞳の中の暗殺者

2000/04/10 東宝第1試写室
人気アニメの劇場版第4弾。連続刑事殺しに蘭が巻き込まれる。
ミステリーとしてはアラが多すぎて白ける。by K. Hattori


 劇場版『名探偵コナン』の第4弾。今回は警察をターゲットにした連続殺人事件がテーマ。警察が身内をかばう体質なども少し描かれていて、昨今のように警察不祥事が連続する時代にはタイムリーな企画かと思ったんですが、最後はやっぱり警察が正義の味方で終わってしまうのね……。息子が問題を起こしていたことが明るみに出たら、警察幹部は辞任するだろ、普通は。遠い親戚が事件を起こしたんじゃなくて、親として監督責任のある子供が起こした事件なんだけどね。まあ息子といっても成人した大人だけど、事件を起こすような出来損ないに育ててしまった責任は当然問われると思うぞ。それが正当な批判なのか否かではなく、日本はそういう場面で親が責任を問われるのが普通だと思うんだけどね。まあいいや。これは本筋とは関係のない話だから。

 本格推理アニメとして評価の高い『コナン』ですが、今回は推理ものとしてはちょっと弱い。犯人が明らかになるところがクライマックスにならず、その後に起きる遊園地内での追跡劇をクライマックスにしてしまった。コナンと犯人の対決の裏で、警察もほぼ同時に犯人を突き止めるというサスペンスがあるわけですが、これがいかにも弱い。容疑者の証言で「別に犯人がいた可能性」に思いが至ったとしても、それが「別に犯人がいる」という確信に変わるわけではない。可能性が確信に変わるには、目の前の容疑者が無実だという確信が必要です。そのためには逮捕された容疑者の明確なアリバイが必要なんだけど、今回の映画にはそれがない。容疑者が「僕はたまたまその場にいただけなんです。犯人じゃありません」と言えば、それで「別に犯人がいる!」ということになるのか? それは容疑者が口から出任せの言い逃れをしているだけかもしれないじゃないか。容疑者のこんな証言で右往左往する警察なんて、ずいぶんと間抜けだよ。クライマックスはこれでずいぶんと白けたぞ。

 犯人が犯行現場からどうやって逃れたかというトリックも、今回はかなりいい加減だと思う。ホテルの中で起きた銃撃事件の直後に建物全体を封鎖し、ホテル内にいる全員の硝煙反応を調べるというのがそもそも非現実的。この検査に、いったいどれだけの時間がかかるんだ? ホテルにはいろんな人が出入りしている。警察のパーティーとは無関係な人だって大勢いるんだよ。そうした人たちを何時間も足止めさせることが、はたして警察に可能なんだろうか? この「硝煙反応」がその後の物語でも大きな意味を持って来るんだけど、硝煙反応なんてものはビニール袋がひとつあれば防げてしまうわけだから、ホテル内の人から硝煙反応が出なかったからといって、それによって「犯人は既に逃走した」ということにはならないでしょうに。

 僕は『コナン』シリーズの中にどんなに荒唐無稽なトリックや小道具が出てきても構わないと思うけど、こうした基本的な部分で抜け道があると、本格推理ドラマとしては失格だと思う。今回はちょっと残念でした。


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