エニイ・ギブン・サンデー

2000/04/06 日本ヘラルド映画試写室
プロ・フットボールの世界を描くオリバー・ストーンの最新作。
力の入った映画だけどドラマは弱いと思う。by K. Hattori


 アメリカで人気があるプロスポーツなのに、日本ではまったくマイナーな存在なのがアメリカン・フットボール。オリバー・ストーンの最新作である本作は、そんなフットボールの世界の裏側を描いたドラマだ。アル・パチーノ扮するトニー・ダマトは、マイアミを本拠地とする“シャークス”を30年の長きに渡って率いてきた男。その間には数々の栄光と屈辱を味わっている。数年前に先代のオーナーが亡くなり、新たにオーナーになったのはその娘クリスティーナ。ダマトは自分を信頼してすべてを任せてくれた先代オーナーとは馬があったのだが、試合の細かな内容にまでいちいち口出しする新オーナーとはどうにもそりが合わない。シーズン途中からチーム内では故障者も続出。優勝を狙える位置にいながら悪夢のような4連敗。しかも名クォーターバックとしてチーム全体をまとめていたベテラン選手のキャップがケガで鮮烈から離れてしまう。ダマトは無名選手のビーメンを後がまとして大抜擢するのだが……。

 2時間半を超える映画の中に、スポーツ映画のあらゆる要素がぎっしりと詰まっています。現場で働く監督とオーナーの対立。無名選手が突如として脚光を浴びるアメリカン・ドリーム。スポーツの中にはびこる商業主義と、選手の中にさえ浸透している利己的な個人主義。スター選手のおごり。ベテラン選手と若い選手の世代交代。結果を重視される監督の孤独。マスコミとの関係。選手たちにつきもののケガ。選手の安全よりチームの勝利を優先するトレーナー。選手とそれを支える家族の関係。チームの移転をめぐる利権問題。脚本家出身のオリバー・ストーンはこれら雑多なエピソードをきれいに構成し、しかも個々のエピソードにたっぷりとボリュームを持たせて見応え十分な映画に仕上げている。

 物語自体はありがちなスポーツものですが、ストーン監督はハッタリを効かせた得意の演出で、ありきたりな物語を欲望渦巻くドラマにしてしまう。その底なしのドロドロぶり、すべてが脂ぎったギラギラぶりは、「やっぱりオリバー・ストーンはこれでなくちゃ」という過剰さ。アル・パチーノ、デニス・クエイド、ジェームズ・ウッズという顔ぶれがいかにも暑苦しいし、キャメロン・ディアスが気の強いオーナーを演じているのもいい。すべてのキャラクターが熱気ムンムンで、少しもホッと息つくひまがない。コマ落とし、コマ伸ばし、スローモーションなどで映像にも凝り、めまぐるしくカットが切り替わり、画面の上には別の画面がオーバーラップし、カメラはいつも移動して被写体の上を動き回る。

 すべてが全力疾走の映画なので、どこがクライマックスなんだかよくわからないのが欠点と言えば欠点。チームの優勝をかけた一戦が物語のクライマックスでしょうが、その前に結構お腹いっぱいになっているので、このあたりに来るともうゲップが出そうになっている。映画を観たという充実感は味わえますが、ドラマを観たという感動は逆に薄まってしまったかもしれません。

(原題:ANY GIVEN SUNDAY)


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