タイでロケしているのだから、台詞の半分ぐらいはタイ語なり英語なりになるのかと思っていたら、この映画はほとんどすべてを日本語で押し通しています。映画に登場する風景はどう見てもタイですが、そこに登場する人物たちは日本人ばかり。プレス資料はこれを「無国籍感」などと形容していますが、単に撮影コストが安いからタイに行っただけじゃないのかね。言葉も上手く通じぬ異郷で、日本人の女の子がたったひとりで殺し屋をやっているという設定なら面白かったのに、殺し屋の元締めも日本人なら、殺しのターゲットも日本人、その妹も日本人(当たり前だ)、主人公にからんでくるもう一人の女殺し屋も日本人では興ざめです。同じようにコストがらみで海外ロケしていても、『SCORE 2 / THE BIG FIGHT』や『WiLD ZERO』には、そこを日本に見せようとする工夫があったよ。無国籍感というのは、どう考えたって日本には見えない場所を日本だと言い張ることや、日本を舞台にして日本では絶対にあり得ないシチュエーションを成り立たせてしまうことから生まれるのではないでしょうか。この映画はその点で手を抜いています。