ミュージカル映画を短く編集するとき、普通はミュージカル・ナンバーをカットしていくのが普通です。『オズの魔法使』や『雨に唄えば』にも、録音や撮影されたものの本編に収録されていないナンバーが存在します。アウトテイクスと呼ばれるこうしたナンバーは、『ザッツ・エンタテインメント』などの映画で観ることができる。またミュージカルをテレビ放送するため尺を大幅に縮めるときは、話の本筋に関係ないナンバーを次々に切っていくものです。僕は以前、歌の場面がほとんど残っていないシナトラの『夜の豹』を観たことがあります。こうなるともはや、ミュージカルという形骸すら残されていない。ところが『ボンベイ to ナゴヤ』は、映画の尺を短くするときドラマ部分を切ってます。観客が喜ぶのはミュージカル・シーンだと知り尽くした上での配慮。しかしこれでは、お話やシーンのつながりがチグハグになってしまう。それでも何となく話が通じるのは、この映画がひどく単純な物語構成だからです。