ウルトラマンティガ
THE LAST ODYSSEY

2000/02/17 SPE試写室
TVシリーズの後日談らしいのだがTVを未見の僕にはさっぱり……。
そもそもこの映画、脚本が悪いと思います。by K. Hattori


 平成ウルトラマン・シリーズの劇場最新版だが、今回はTVシリーズの後日談なので、TVを見ていない僕には何が何だかよくわからなかった。単純に脚本が悪いのかもしれないが、TVを見ている人にとってはこれでいいのかもしれない。そのあたりの判断が映画を観るだけではまったく付けられないという、気持ちの悪い作品になっている。劇場オリジナルの『ウルトラマン・ゼアス』や『ウルトラマン・ゼアス2』はともかくとして、TV番外編の『ウルトラマンティガ&ウルトラマンダイナ/光の星の戦士たち』にしろ『ウルトラマンティガ・ウルトラマンダイナ&ウルトラマンガイア/超時空の大決戦』にしろ、僕はちゃんと楽しめたんだけど……。今回は平成ウルトラマンになって始めて「わからんぞ!」と思ってしまった。コリャどういうことだ?

 監督・特技監督が前作までの小中和哉から村石宏實に交代し、映画のタッチがずいぶん変化したように思う。小中流のハッタリとケレンが僕は好きだったんですが、今回の村石演出は比較的オーソドックスです。しかしそれでは、映画の大画面が妙にチマチマしてしまって、映画からは爆発的な勢いが感じられない。物語の上でも、敵との戦いの場が海上に浮かぶ古代遺跡という人里離れた場所になっているため、ミニチュアの町をばんばんぶっ壊す特撮の醍醐味も味わいにくい。TVを知らない人間が1本の映画として観た場合、食いつく旨味がどこにもないように思えるのです。それがちょっと残念。

 僕はティガの「光の戦士」という設定が宗教臭くて嫌いなんですが、今回は「闇の巨人」まで登場して、物語が光と闇、善と悪の二元論になってしまいました。ティガがかつて闇の巨人の一員で、それが自分の中にある光に目覚めて生まれ変わったという設定など、中途半端にグノーシズムの香りまでするんだよね……。これを徹底していけばまた別の世界が作れるんでしょうが、この映画の中ではそこまで描かない。ま、当然か。

 総合的に考えるに、これはやはり脚本が悪いような気がする。TVシリーズから2年たって、主人公たちが結婚するという状況がまずある。そのくせに、この映画にはロマンスの香りがまったくしません。だからティガの昔の恋人カミーラが現れれても、もともとロマンスの香りがないから、三角関係にはならないのです。せっかく面白そうな設定を作っても、これでは台無しです。映画の中盤以降も、ティガを自分たちと同じ闇の側に引き寄せようとする3巨人の論理が、今ひとつわかりにくい。神話的な二元論世界を作っても、そこで葛藤や駆け引きが行われないから、単なる善玉と悪玉の戦いに、奇妙な格好を付けているだけのように見えてしまう。映画に情感がないのは監督の演出のせいもあるんだろうけど、例えば「F計画」という思わせぶりな設定が、途中からまったく姿を見せなくなってしまうというような不可解さもある。もっと脚本を練り上げれば、同じ話でももっと面白くなったと思うんだけどなぁ……。


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