コンフェッション

2000/01/25 GAGA試写室
作家志望の男が盗んだ原稿は、連続殺人の告白書だった。
キューバ・グッディングJr.主演のスリラー映画。by K. Hattori


 弁護士をやめて作家になろうとした男が、老人から手渡された未公表の小説原稿。趣味で書きためた原稿を、老人はまだ誰にも見せたことがないと言う。その小説は、悪徳弁護士が次々に殺されるミステリー。素人が手すさびに書いたとは思えぬ、迫力に満ちた大傑作だった。だが原稿を返す間もなく、老人はひっそりと息を引き取っていた。原稿はどうするべきか。この原稿の存在を知っているのは自分しかいないのだ。男は誘惑に負けた。彼は原稿を自分の名義で出版し、夢にまで見た大ベストセラー作家の仲間入りをはたす。だが警察はこの小説とまったく同じ内容の殺人事件を捜査中だった。小説の中には、犯人しか知り得ない情報が詳細に書き込まれている。これは小説ではなく、犯罪の懺悔録だ。警察はラッセルを弁護士殺人事件の犯人として逮捕する……。

 身に覚えのない罪を着せられた男が、警察から逃れながら真犯人を捜す『逃亡者』形式の映画。主人公を演じるのはキューバ・グッディングJr.。彼を追跡する刑事をトム・ベレンジャーが演じている。監督・脚本は『スリー・リバース』のローディ・ヘリントン。まずまず型どおりにできている作品で、そこそこ面白いけど、特別面白いところはなく、ミステリーとしてのあらも目立つ映画です。そもそも、小説が連続殺人事件の告白なのか、それとも小説に影響されて犯罪が起きたのかという因果関係が不明確。ここでは本が出版される前に殺人事件が起きていることさえ明確にすればいいのに、なぜその説明がないのだろうか。主人公が殺人容疑を晴らすには、アリバイを証明すればいい。おそらくリゾート地でぶらぶら過ごしていた主人公にはアリバイがないのでしょうが、そのことについても映画はまったく述べていない。こうした点は観客も真っ先に気づくんだから、まずはそうした穴を簡単にふさいでおいてほしい。たった一言の台詞があればいいのに、それがないのは不満です。

 主演のキューバ・グッディングJr.はアカデミー賞受賞俳優ですが、ある程度型にはまった役を演じて光る役者だと思う。今回の弁護士役は、彼の柄じゃないと思う。もちろん本人は俳優としての野心があるから、こうした役も演じてみたいのでしょう。今回彼は製作者も兼ねているからなおさらです。でも似合わない役は、誰が演じたって似合わないのです。役者の中にはデ・ニーロのようにどんな役でもやりこなしてしまう人がいるけれど、それが映画俳優として特別優れていることでもないだろうと思う。あるパターンの役をやらせればアメリカで一番上手いと言われることだって、役者としては名誉なことだと思うんだけどなぁ。その点、共演しているトム・ベレンジャーを僕は支持してしまいます。彼は刑事や軍人を演じさせるとピカイチの役者ですからね。

 ところで今回の映画で真犯人を演じたマーク・ペリグリーノという役者は、一体何者なんだ? プレス資料には名前以外のデータがない。これ1本の人のような気もするけど、ちょっと気になります。

(原題:A MURDER OF CROWS)


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