平成金融道
マルヒの女

1999/12/22 東映第1試写室
夏樹陽子主演の『平成金融道』シリーズ第2弾。
面白い映画だが、タイトルはなんじゃ? by K. Hattori


 夏樹陽子が中小企業の倒産引受人を演じた『平成金融道・裁き人』の続編。監督は前作に引き続いて和泉聖治。東映洋画系で全国公開とはいえ、公開規模は余りにも小さくてビデオ向け作品であることは明白。しかし、この映画が滅法面白いのだ。東映は同じ和泉監督の『ナイル』より、この作品を全国公開すべきだった。僕は前作の『裁き人』の時からこの映画がシリーズ化されることを望んでいたので、続編の登場がまずは嬉しい。そして続編の内容が面白かったことに大満足だった。

 前作では三谷昇や大鶴義丹が主人公の事務所のスタッフを演じ、清水健太郎が幼なじみのヤクザを演じていたのだが、今回はメンバーがかなり入れ替わり、こうした味のある連中が姿を消してしまった。もし3作目を作るのなら、こうした1作目のメンバーの返り咲きもお願いしたい。今回は主人公・立花亜希子に頭の上がらない金融業者の社長を小柳トム、もとい、ブラザー・トムが演じ、亜希子を慕う若手検事を加勢大周が演じて、主人公周辺をがっちりとガード。この少々頼りない顔ぶれが、主人公の亜希子を大きく全面に引き出してくる。誰かが彼女の足を引っ張るわけではなく、ふたりとも十分に彼女の助けにはなっているのだが、1作目の清水健太郎のようなスーパーマンではないので、主人公が自分でがんばらなければならない部分が増えるのだ。これによって、宿敵であるパクリ屋・宍戸錠との対決がスリリングになる。ヤクザ連中との格闘も手に汗握ることになる。

 パクリ屋の仕事というのは、その手練手管だけを見ていれば『スティング』のコンゲームとさして変わらない。騙す側がかっこよくて、騙される側が間抜けみたいに見える。そのため映画では普通「騙す側」が主役になることが多く、詐欺話を阻止しようとする主人公の活躍は、映画としては少々野暮なものなのだ。しかしこの映画は『スティング』型のコンゲーム映画を逆転させて、騙される側に主人公を置いたところがユニークであり、しかも今日的なものになっていると思う。『スティング』のように大物のギャングや政治家を騙すなら「ざまあみろ」「してやったり」と喝采の拍手も送れるが、資金繰りで日々苦労が絶えない中小企業の弱みにつけ込んで詐欺を働く連中には、やはり正義の鉄槌を下さなければならないのだ。僕の周囲にも中小零細企業の経営者というのが何人かいるので、この映画に登場する社長連中の騙されぶりは他人事じゃない。商売なんて半分以上は信用で成り立っているのだから、最初から騙すつもりで商売をすれば、どうにだって騙せてしまうのです。

 16ミリ撮影のブローアップなので画面が粗いのだが、これが場面によっては隠し撮り撮影のような生々しさにつながっていて迫力十分。エピソードの中にはややセンチメンタルな部分もあるが、これも許せる範囲。気になったのはパーティー場面でなぜ柿澤弘治が出てくるのか意味不明だったことと、そこで夏樹陽子の歌がBGMとして流れてくるぐらいかな……。さらなる続編を望む!


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