エンド・オブ・デイズ

1999/11/25 日本劇場(完成披露試写)
シュワルツェネッガーが復活した悪魔と戦うオカルト・アクション。
これを楽しむにはキリスト教の知識が必要です。by K. Hattori


 試写が終わった後、みんな困った顔をしてたのが印象的。世界を滅ぼそうとするサタンと、人類の存亡を賭けて戦う男を描いた、シュワルツェネッガー主演のオカルト・アクション映画ですが、話の展開そのものはほとんど先読みできてしまい、少しもハラハラドキドキしないのです。サスペンス映画としても、ミステリー映画としても、ホラー映画としても、アクション映画としても、特撮映画としても、抜きん出たところが見あたらない。この映画の面白さは「オカルト映画」というところだけ。僕はキリスト教オタクなので、映画の最初から最後までニタニタ笑いながら大いに楽しめました。この映画こそ「キリスト教の知識がないと理解できない映画」です。話そのものは理解できても、どこが面白いんだかさっぱりわからずチンプンカンプンでしょう。

 この映画、話の筋だけを取り出すとどこにも新味がないのです。サタンの復活とハルマゲドンというテーマは『オーメン』があるし、ウォール街の株屋にサタンが取り憑くというアイデアは『ディアボロス』と似ている。撮影監督も兼ねるピーター・ハイアムズ監督ですが、ヘリコプターのアクション・シーンは『サドン・デス』だし、暗闇や炎を効果的に使った映像は『レリック』を連想させます。手慣れた演出なので安心して観られますが、「おお、これは!」という驚きは少しもない。結局この映画の見どころは、ぎっしりと詰め込まれたオカルト要素ということになる。ヨハネの黙示録、最後の審判、千年王国、サタンの復活、悪魔崇拝、Ω、テンプル騎士団、聖痕、預言と異言、聖金曜日、十字架、ミカエル、ヨブ記、荒野の誘惑、西暦の由来……。これらに関する知識が少しでもあれば、この映画はものすごく面白い。

 例えばロッド・スタイガー扮する神父が悪魔復活の年を獣の数字から導き出し、それを天体の運行と結びつけて「グレゴリウスは悪魔復活の年から逆算して現在の暦を作ったのだ!」と言い出したときの衝撃。はっきり言って無茶苦茶ですが、西暦をキリスト誕生紀元ではなく、悪魔復活からの逆算だと解釈したのは新鮮でした。これでキリスト誕生年が西暦と食い違う謎が解けた!(でもこの場面、みんな笑ってましたけど……。)

 サタンと戦って勝てる人間がいるのか? 悪魔がいるなら天使がいるのではないか? 神が登場しないとバランスの上で都合が悪いのではないか? じつはこの映画では、シュワルツェネッガーが神なのです。これもまた無茶苦茶な話ですが、映画の中では何度か主人公をキリストだとほのめかす場面が出てきます。どこがどうほのめかしなのか、キリスト教の知識がない人にはさっぱりわからないでしょうけど……。詳細まで解説したいのはやまやまなれど、それをすると映画の最後までネタを割ることになるので避けます。

 この映画、物語のクライマックスが1999年の大晦日だから、それ以前に観ないと面白くもおかしくもない。日本での公開時期は、ちょっと遅すぎるかも。

(原題:END OF DAYS)


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