GTO

1999/11/22 東映第1試写室
反町隆史主演の人気ドラマが映画になった。舞台は北海道。
共演は藤原紀香と田中麗奈。物語に新味はない。by K. Hattori


 少年マガジン連載中の人気コミックを、フジテレビが反町隆史主演でTVドラマ化したら大人気。『踊る大走査線』以降の最近の風潮として、これは当然映画化することになる。映画化するときには、内容をTV以上に豪華にしなければならない。そんなわけで、TVとは切り離して番外編を作った。主演の反町隆史はTV版と同じだが、物語の舞台は北海道。ヒロインとして、今売れっ子の藤原紀香と田中麗奈を共演させている。僕はこの日『はつ恋』も観ていたので、なんと田中麗奈2連発。田中麗奈はデビュー作の『がんばっていきまっしょい』も東映配給だった。何かと東映に縁のある人ですね。

 僕は原作コミックを読んでいないし、TVドラマ版もアニメ版も見ていない。それでも映画版を観て、「こんなものか」ということだけはわかる。物語の基本は、古めかしくて手垢の付いた青春学園ドラマなのです。舞台は北海道の私立高校。わがまま一杯に育った理事長の一人娘は、美人で成績優秀だけど性格がひねくれている。しばしば自殺未遂や狂言自殺騒ぎを起こして、周囲の教師たちを冷や冷やさせている。そんな行動がたたって、彼女には友達らしい友達がひとりもいない。しかし、そんな彼女に恋しているクラスメートの少年がひとり。だが引っ込み思案な彼は、彼女に気持ちを告白することができないでいる。町の実力者である理事長に気兼ねして、少年の両親も「馬鹿なことはしてくれるな」と思っている。そこに現れたのが、東京から3週間という期限付きでやってきた型破りの熱血教師・鬼塚英吉なのだ。

 古めかしくて手垢の付いた物語に新風を吹き込んでいるのは、まさに主人公・鬼塚の型破りぶりに他ならない。話の筋立ては今から20年前、30年前の青春ドラマと少しも変わらないのだから、新味を出そうとすれば教師の側を通り一遍の「熱血教師」にしたのでは飽き足らないのだろう。GTO(グレート・ティーチャー・オニヅカ)こと鬼塚英吉の型破りぶりは、既存の青春ドラマの枠を大きくはみ出している。こんな教師が実際にいたら、3秒でクビになるだろう。しかしそんな型破りぶりが通用してしまうのが、まさにマンガでありドラマなのだ。

 古いタイプの青春ドラマでは、「友達のような先生」「生徒と一緒に泣いたり笑ったり悩んだりする先生」を描いてきた。教師と生徒が権威主義的な上下関係で結ばれているのが当然だった時代には、こうした「友達先生」が新鮮に見えたのだ。しかし今の学校では教師の権威ががた落ちし、どの先生も「友達先生」になってしまった。そんな時代に求められるのは、生徒の上に立ってリーダーシップを発揮できる強い教師。『GTO』の主人公・鬼塚英吉は、まさにそういう教師だ。しかし彼の強さは「教師だから」という権威によって保証されているのではない。彼は生徒たちの中で行動し、発言することを通して、生徒たちの信頼を得ていく。彼はサルの群を束ねるボスザルのようなものだ。こうした教師像は、今までにない新しさを持っていると思う。


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