狂っちゃいないぜ!

1999/11/10 FOX試写室
ジョン・キューザックとビリー・ボブ・ソーントンが航空管制官に挑戦。
マイク・ニューウェル監督の最新作。by K. Hattori


 『フォー・ウェディング』『フェイク』のマイク・ニューウェル監督が、航空管制官を主人公にした人間ドラマを作った。舞台は大都市ニューヨークの航空交通管制(TRACON)センター。ケネディ空港、ラ・ガーディア空港、ニューアーク空港の管制を一手に引き受け、超過密スケジュールの航空便をパズルのように組み合わせている管制官たち。だがこれが通常のパズルと違うのは、パズルの駒のひとつひとつが、そのまま数百人、数千人という人名を表していること。管制官たちの仕事は単調のようでいて、毎日がストレスの連続だ。主人公ニックは、そんな管制センターの花形管制官。仲間や上司の信頼も厚く、パイロットたちからも一目置かれている。美人の女房と子供たちも自慢の種だ。ところがそんな彼の前に、地方の空港からラッセルという管制官が配属されてくる。ラッセルはニック以上の凄腕。しかも彼の女房はニックの妻以上に美人! いつしかニックはラッセルに対し、異様なライバル意識を持つようになる。やがてふたりの関係は、ニックがラッセルの女房と寝てしまったことで決定的にこじれてしまう……。

 航空管制官を主人公にした映画としては、つい昨年『グランド・コントロール/乱気流』という大傑作が公開されている。年末年始で大混乱する地方空港の管制室を舞台に、さまざまな人間のドラマが盛り込まれたこの映画の前では、『狂っちゃいないぜ!』もかなり大味に思えてしまう。それはそれで仕方がない。『狂っちゃいないぜ!』は航空管制官という職業を描いた映画ではなく、航空管制官という職業に就いている男たちの友情と家族の物語です。この映画の中では、話の中心が「職場の同僚の妻と寝てしまった主人公と妻の関係」にあって、管制室そのものは二の次になっている。この話自体は、男の職業が何であれ成立するものなのです。ここではその職業が、消防士や警察官、出版社や広告代理店ではなく、航空交通管制官になっているだけ。なじみの少ない職業だから、当然仕事の内容を紹介する場面も多くなる。この職業にしたメリットは、これが絶対にミスの許されない仕事だという点。「家でいろいろあってボンヤリしてました」では絶対に済まないのです。

 主演はジョン・キューザック。彼の妻役でケイト・ブランシェットが出演していますが、『エリザベス』や『理想の結婚』とはまったく違うアメリカン・ガールで、少しびっくりしてしまいました。ライバル管制官ラッセルを演じているのはビリー・ボブ・ソーントン。彼と管制室の取り合わせは『アルマゲドン』を連想させそうですが、今回は少し性格に問題のあるひねくれ屋の管制官を演じていて、『アルマゲドン』とはまた違った管制官になっている。大した役者です。

 航空管制が登場する映画には、他にも『ダイ・ハード2』などもあった。飛行機を飛ばすのになくてはならない裏方にスポットを当てていると言う意味で、観ればなかなか興味深い点も多い映画だと思います。

(原題:PUSHING TIN)


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