セカンドチャンス

1999/10/20 東映第1試写室
失敗した恋をやり直そうとする女性たちを描くオムニバス映画。
どれもアイデアは面白いのに詰めが大甘。by K. Hattori


 一度失敗した恋をやり直そうとする女性たちを主人公にした、3人の主人公による3話で構成されたオムニバス映画。主演は清水美砂、鈴木砂羽、倍賞美津子。監督は『ひき逃げファミリー』の水谷俊之と、『湾岸バッドボーイブルー』の富岡忠文。どのエピソードもアイデアは面白いのに、中身が薄い、薄すぎる……。映画の尺が一般的な長編映画の半分や3分の1だからといって、短編映画(1話40分あれば立派な中編映画だけど)では観終わった後の充実感や感動まで半分や3分の1で我慢しなければならないのでしょうか? そんなことはないはずです。長編映画が大掛かりな露天掘りだとしたら、短編映画は間口の小さな井戸をまっすぐに掘り進んで行くようなもの。長編も短編も、到達する深さに違いはないはずなんです。そうしたことが、この映画の作り手に少しでもわかっていれば、こんなに腑抜けた映画にはなっていないと思うんですが……。

 第1話はブライダル衣装店に勤めている女性が主人公。別れた彼のことが忘れられないでいるうちに、よりにもよって元彼氏が新しい彼女と結婚衣装を選びに来て……、というお話。最後にどんでん返しの結末が用意されているのですが、この映画はそこに至る伏線がまったく存在しないため、映画を観ていると不当にだまし討ちにあったような不快感を持ってしまう。「あっ、そうか!」「なるほど、そうだったのか!」と納得することがまったくない。「いいのかよ、それで!」「お前たち、いくらなんでもそれはないだろう!」と文句の10や20は出てこようというものだ。最初に恋人と別れるにはそれなりの理由があったはずなのに、それをまったく不問にしたままこの結末はないだろう。無責任すぎる。

 車の代走屋をしている女性と元不倫相手がばったり再会してしまう第2話は、話としては一番よくまとまっていた。ただし、演出にキレがないのが残念。人物も場所も限定されたドラマだから、芝居のタッチを要所要所でガラリと変えて変化を出さないとダレてしまう。この映画はダレかけてます。もう少しメリハリを付けて、男と女のだまし合い、本気とも嘘とも付かないやりとりを見せてほしかった。最後のオチまで一気に持っていくスピード感がないと、結末が読めてしまいます。

 第3話は元夫婦が娘の結婚式で偶然再会するというお話。これはエピソードをもっと詰め込んで、人情味たっぷりの長編コメディにすることができるようなアイデア。結婚式には親戚や友人、仕事関係者などいろんな客がいるのだから、そうした人たちと主人公たちとの絡みで、もっと辛辣なエピソードを作れるはずです。新婦の親族は、父親が司会者で登場したら普通は気づくでしょう。それともこの披露宴に、新婦の親戚はいなかったのか?

 全体によくわからない映画でした。僕はガーシュインが好きだから、「優しき伴侶を」がテーマ曲になっているだけで点を甘くしてしまいそうですが、それでも映画がつまらないという事実は覆い隠しようがない。


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