無問題
(モウマンタイ)

1999/10/12 シネカノン試写室
岡村隆史(ナインティナイン)と佐藤康恵が出演した香港映画。
アイデアはユニークだが映画としては弱い。by K. Hattori


 ナインティナインの岡村隆史主演の香港映画だが、彼が主演していなければ、たぶん日本で劇場公開しなかった映画でしょう。要するに、あまり面白くない。タイトルの『無問題(モウマンタイ)』というのは、中国語で「問題ない」「大丈夫」「まかせてくれ」みたいな意味。中国語がわからない主人公は、友人から教えてもらったこの言葉ひとつで、香港映画界に潜り込んでしまう。

 主人公・大二郎は恋人・玲子と同棲していたが、彼女は「ジャッキー・チェンの会社で受付嬢をやりたい!」と宣言して突然香港に行ってしまう。大二郎も彼女を追って香港へ。友人のツテで映画スタジオを訪れた彼は、どんな危険なスタントでも「モウマンタイ!」と引き受ける度胸のよさ(本当は語学力がないだけ)を買われて、スタントマンとして一目置かれるようになる。だが玲子との仲は修復する機会がない。ある晩、大二郎の部屋に中国から密入境してきた女性が現れる。香港にいる恋人に会いたいという彼女の身の上話に、大二郎は自分の境遇を重ね合わせていたく同情してしまう。危険を承知で、大二郎は彼女を部屋にかくまうことにするのだが……。

 アクション・コメディなのか、ラブ・ストーリーなのか、青春映画なのか、それとも人情劇なのか、どっちつかずで中途半端すぎる映画です。中国語ができないスタントマンなんて、撮影前に打ち合わせができないから実際は危なっかしくて仕事にならないと思うんだけど、それをあり得ることだと納得させるためには、映画全体をもっとハチャメチャにしなきゃならない。登場人物の性格付けももっと極端にして、主人公の感情の浮き沈みを極端に大きくするとか、恋人・玲子の性格をもっと性悪にするとか、撮影所の仲間たちにも個性的な顔ぶれを揃えるとか、工夫の余地はまだまだたくさんあると思う。

 この映画は香港映画と言いながら、製作には日本テレビやバンダイビジュアルがからみ、プロデューサーも日本人だったりする。監督・脚本と現場のスタッフが香港だけど、企画そのものは日本で生まれたものでしょう。大二郎やその友人のように香港映画界で活躍している日本人の俳優やスタントマンは実際に存在するし、玲子のように香港の会社でOLをやっている日本人の女性も大勢いる。彼らはみんな、日本にはない何かを香港に求めてがんばっている。脚本を作る前にそうした実際の香港在住日本人たちを丁寧に取材し、日本にいる我々にも共感できるような映画を作ってほしかった。この映画では、玲子は何となく生活を変えたくて香港に渡ってしまうし、大二郎も成り行きでスタントマンになってしまう。これで登場人物たちに共感しろと言われても無理です。「何となく」や「成り行き」を描くにしても、そこに至るまでの経緯や必然性をきちんと描いてほしかった。

 クライマックスは岡村隆史本人が吹替なしで演じるビル屋上からのジャンプだが、ここに至るまでの心理的葛藤に厚みがないため、彼の人生にとってこのジャンプがどんな意味を持つのか不明確になってしまった。残念。

(原題:無問題)


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