ロッタちゃん
はじめてのおつかい

1999/10/07 日本ヘラルド映画試写室
スウェーデンの国民的アイドル、ロッタちゃんが映画になった。
ブタのぬいぐるみも含めて超カワイイ。by K. Hattori


 「長くつ下のピッピ」「やかまし村の子どもたち」など、映画ファンにもおなじみの作品が多いスウェーデンの児童文学作家アストリッド・リンドグレーン。彼女が1958年から書き始めた「ロッタちゃん」シリーズは、1990年までに5作品が書かれた人気シリーズ。こまっしゃくれた5歳の女の子が大活躍する物語は、日本で言えば「クレヨンしんちゃん」みたいなものかな。(ちょっと違うか……。)「ロッタちゃん」は日本でもすべて邦訳が出版されているらしい。この映画は原作の中から、「ロッタちゃんのひっこし」「ロッタちゃんとクリスマスツリー」「ロッタのひみつのおくりもの」の3話を映画化したものだ。子どもが出てくる映画は往々にして作り物めいた白々しさがあるものだが、この映画は作り物としての匂いをあえて残しながら、その中に人間ドラマをきちんと盛り込むことに成功している。傑作です。

 3話はそれぞれが独立した話だが、映画の中ではエピソードの切れ目を季節感の変化で表現している。ロッタが家出する最初のエピソードは「クリスマスまであと4ヶ月」という秋。お父さんがクリスマスツリーを買い忘れて家の中が大騒ぎになる第2話は、当然のことながら雪の降る冬。それが終わると雪が解けて春になり、子どもたちがイースター(復活祭)のお菓子集めにはしゃぎ回る。子どもが魔女の扮装をして近所の戸口を回るのは、アメリカではハロウィン(秋)の習慣。スウェーデンではそれがイースター(春)に行われるのですね。映画を観ていると、そんな世界の生活習慣がわかって面白い。

 大人の目から見ると、子どもはごく小さな世界に住んでいる。この映画の主人公ロッタにとって、世界は自分の足で歩ける数百メートルの範囲に過ぎない。その世界のなかでは、ロッタは誰とでも顔見知り。近所の住人、商店主、通りを歩く人や犬までが、ロッタにとってはすべて旧知の人なのです。ロッタの世界はごく狭いものですが、ロッタは自分に与えられた全世界の中を、自由自在に走り回る。その世界は、毎日が新しい発見や驚きに満ちています。ロッタは大人の目が届く小さな世界の中で、人間の絆や思いやりの大切さ、人生の不条理、世界に満ちているありとあらゆる不思議について学ぶのです。

 主人公ロッタを演じているのは、この映画の撮影時に7歳だったというグレテ・ハヴネショルド。監督のヨハンナ・ハルドはこの映画の前にも1本、ハヴネショルド主演で「ロッタちゃん」を撮っているらしい。それも観てみたい。劇場で無理ならビデオを出してくれ!

 この映画は家族全員が観て楽しめる作品なのでしょうが、字幕版ではロッタと同世代の子どもたちが観るのは無理。かわりと言ってはなんですが、この映画は「託児サービス付き公開」という日本初の試みにチャレンジするそうです。映画を観ている間は小さい子供を託児所に預けて、入場料は託児サービスの料金込みで一般と同じ1800円の予定。これは子供がいるお母さんには嬉しいよね。他の映画でもぜひやってくれ!

(原題:LOTTA FLYTTAR HEMIFRAN)


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