ラヴ・ゴッド

1999/10/04 映画美学校試写室
精神病院を退院した青年が隣室の潔癖症少女と恋に落ちるが……。
とにかく退屈、とにかく不快なモンスター映画。by K. Hattori


 バカが作ったバカ映画。これは本当にバカ。撮影と編集をデジタル処理しているのは、最近の低予算映画の傾向。この映画はテレシネがきれいで、フィルム撮影に遜色ない場面も多い。そんな発見だけが面白かったかな。

 予算不足で精神病院から大量の患者が退院させられる。強迫観念読書症候群のラルー・マックスウェルも、そんな退院患者のひとりだった。この病気は、文字があるとつい読んでしまい、読み終わった紙をバラバラに引きちぎらずにはいられないという深刻な病気。薬品で発作を抑えていたのだが、自分を正常だと考えるラルーは処方された薬をトイレに捨ててしまう。発作を抑えるため、度の合わないメガネをかけて文字が見えないようにするラルーだが、ふとした拍子に文字が目に飛び込んでくると、猛然と飛びかかっていく。やがて彼は、アパートの隣室に母親と住むヘレンという少女と恋仲になる。その頃、病院のノグチ医師は、長年研究していた巨大吸虫のサンプルが逃げ出したと聞いて大あわて。逃げた吸虫はラルー周辺の人々を次々に襲い、身の毛もよだつモンスター“ラブ・ゴッド”へと変身させてしまう。

 1時間22分という短い上映時間にも関わらず、やけに長く感じてしまった。だって、つまらないんだもんね。登場するモンスターは、テレビのバラエティー番組に出てくるかぶり物と同じレベルの造形センスだし、登場する精神病患者たちもただ奇声を上げながらウロウロするだけで、個性というものが感じられない。物語の中心になるのは、活字中毒のラルー、潔癖性の母親を持つヘレン、吸虫の研究にすべてをかけるノグチ博士、助手のダーラぐらいのものだが、それぞれの行動がまったくチグハグで、物語の中でかみ合わない。これではドラマが成立せず、スクリーンの中をただ大勢の人間がドタバタ走り回るだけの映画になるのも当然だ。

 荒唐無稽な描写が次々登場するのに、それが現実のリアリティーを突き抜けて「バカバカしい」レベルにまでは達していない。どれも中途半端なのだ。グロテスクなスプラッタ描写がやりたいのか、スラップスティックを目指しているのかが不明確。めまぐるしくカットを切り刻むことに熱中するあまり、そうしたテクニックを使って何を描こうとしているのか、自分自身をの目的を完全に見失っているような気がする。物語の設定やモンスターのデザインを見る限り、これはひたすらバカバカしくマンガチックな世界を目指したのでしょう。ところが映画は、現実の生々しさにドップリと両足をつっこんだままで、少しもバカな世界へと飛翔しないのです。

 最初の10分を観ただけで「早く終わってくれないかな」と思ってしまった。エンドロールが流れはじめたときは本当にホッとしたが、その後もつまらないエピローグのような描写が長々と続くのには参った。映画を観終わった後は、ひたすら不愉快。「なんだかスゴイものを観てしまった!」という衝撃もない。なんだか元気のない映画だったなぁ……。

(原題:LOVE GOD)


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