愛と憎しみのデカン高原

1999/09/28 シネカノン試写室
親の反対を押し切って結婚するカップルを描くインド映画。
ヒロインの父は暴力団のボスだった。by K. Hattori


 インド公用語のひとつテルグ語で作られた映画。ヒンディー語映画、タミル語映画、テルグ語映画の製作本数を比較すると、最近はテルグ語映画の数が一番多いのだそうな。もっともそんなことは、字幕で映画を観ているこちらにまったく関係ないですけどね。

 ハイダラバードの大学に通うギリは、曲がったことが大嫌いの熱血漢。友人たちも多く、両親にとっても自慢の息子だが、しばしばケンカ騒ぎを起こすのが玉に瑕。ある日、大学でケンカ騒ぎを起こしたギリは、親から命令されて姉の嫁ぎ先である小さな町で謹慎することになる。ところが彼は、姉の家の隣に住む美女カーヴェリに一目惚れ。彼女もギリに好意を寄せて、ふたりは結婚を誓い合う。だが問題がふたつ。ひとつは、ギリに親の決めた婚約者がいること。ギリは友人たちの協力を得て、婚約を破棄することに何とか成功する。だが残るひとつが難問だ。カーヴェリの父親は、人殺しなど何とも思わない暴力団のボス。自分の知らぬ間に男と恋仲になった娘に激怒した父親は、ギリを殺そうとするのだが……。

 物語に大きな飛躍があるし、構成のバランスも悪い。ただし「好きになった相手が暴力団組長の娘だった」という話は、日本でもありそうな話で面白いと思った。カーヴェリを連れてきたギリに対し、両親が「この娘の父親は人殺しだ」「私たち中流階級は厄介ごとに関わりたくないのだ」と拒絶反応を起こす気持ちはよくわかる。ましてや映画の観客は、カーヴェリの父親がどれだけ残忍で冷酷な男かということを、映画の冒頭で頭にたたき込まれている。彼は自分の主張を通すために、部下の父親をその目の前で殺しても良心の痛みを感じない男です。自分のプライドが傷つけられれば、ギリ本人はもちろん、ギリの両親や友人たちなど、虫けらのように殺すでしょう。ひょっとしたら、娘さえ殺すかもしれない。「親の反対を押し切って結婚」とか「いざとなったら駆け落ち」なんて口で言うのは易しいけど、反対している親が殺し屋を差し向けるとなれば話は別。でもギリはそこから逃げない。ギリの両親も逃げない。ギリの友人たちも逃げない。このあたりは、映画だからね……。

 次々事件は起こるし、要所にミュージカル・シーンもあって飽きはしないのですが、かなりヌルイ展開の映画です。特に前半はダレダレ。ギリがどうやってカーヴェリを口説くのかと思ったら、ハート型のスナック菓子をプレゼントするのには驚いた。なんという安上がりな愛の告白。プレゼントで大切なのは気持ちで、値段は関係ないってことはわかるんですが、それにしてもねぇ。

 主人公ギリを演じたヴェンカテーシュは、ウィル・スミスを色白にして踊りのキレを鈍くしたような風体。インドじゃ人気があるらしいですが、僕はあまり魅力を感じなかったなぁ。ヒロインのカーヴェリ演じているアンジャラ・ジャベーリは可愛いけどね。ギリの婚約者だった娘をもう少しきれいな女優に演じさせると、三角関係のドラマが生まれて面白くなったのに。

(原題:Premincukundam Raa!)


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