NYPD
15分署

1999/09/02 日本ヘラルド映画試写室
チョウ・ユンファが汚職警官に扮した警察ドラマ。
共演はマーク・ウォルバーグ。by K. Hattori


 『男たちの挽歌』『リプレイスメント・キラー』のチョウ・ユンファと、『ブギーナイツ』『ビッグ・ヒット』のマーク・ウォルバーグ主演の警察ドラマ。巨大なチャイナタウンを管轄地域とするニューヨーク市警15分署には、東洋系の捜査員で組織されるアジア犯罪取締班が存在する。そのリーダー格が、15分署で最初の東洋系捜査官となったニック・チェン。チャイナタウンでは旧来からの中国系マフィア組織“トン”と、新興勢力の“福建ドラゴン”が勢力抗争を繰り返し、双方の構成員だけでなく、観光客まで巻き添えを食っている。そんな中、アジア犯罪取締班に若い白人警官ダニエル・ウォレスが補充される。彼はチェンとコンビを組んでチャイナタウンの犯罪組織撲滅を目指そうとする。だがチェンには“トン”から金と情報が渡り、“福建ドラゴン”潰しの先棒をかついでいる状態だ。“トン”のナンバー・ツーであるリーは、新入りのウォレスにも接近して彼を買収しようとするのだが……。

 原題にある「Corrupt」というのは「堕落した」「汚職の」「買収された」という意味。これは犯罪者たちと癒着した警官のことだ。映画の中には何人かの汚職警官が出てくる。アジア犯罪取締班のチェンは“トン”に便宜をはかってもらい、元警官だったウォレスの父親も汚職で馘首になっており、ウォレス自身も“トン”に買収されそうになる。しかし汚職で腐った警官は、100%腐りきっているのだろうか? その中には罪を憎む警官としての情熱も、市民を守ろうとする使命感もなくなっているのだろうか? じつはこのあたりが微妙なのです。

 主演のチョウ・ユンファはアメリカでも香港映画テイスト満載の『リプレイスメント・キラー』に主演しているし、マーク・ウォルバーグの『ビッグ・ヒット』も香港映画ばりのアクションが見どころだった。そのふたりが主演するのだから、この映画も香港映画タッチの華麗なアクションシーンが見られるかというと、まったくそんなことがないのだ。監督は『摩天楼を夢みて』『チェンバー/凍った絆』のジェームズ・フォーリーだから、ここで華麗なアクションやガンさばきなど期待しても無理というものかもしれない。特にヘタクソというわけでもないけれど、ごく普通のハリウッド映画です。

 製作総指揮に『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』の脚本家でもあるオリバー・ストーンが名を連ねている。この映画はアメリカの中国系社会を描いている点で面白いし、警察内での差別の問題などにも触れている点に気配りが感じられる。人物配置にトリックがあるのであまり内容に触れられないが、話もまずまず平均点クラス。でもこれなら、わざわざ劇場で観るまでもないかもしれない。かわいいヒロインが登場しない男臭い映画だけど、男同士の関係にも熱っぽさがないしなぁ……。同じ脚本でも、ジョン・ウーが撮ればまったく別の話になったと思う。登場人物たちの感情の起伏を、もっと大げさに演出した方がよかったかもしれない。

(原題:The Corruptor)


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