ジーンズ
世界は2人のために

1999/08/05 徳間ホール
アメリカ育ちのインド人兄弟とインド美女の恋物語。
世界ロケしたミュージカル場面は大迫力。by K. Hattori


 昨年の東京ファンタで予告編を観せられて以来、ずっと楽しみにしていたインド映画の大作『ジーンズ』を、ようやく観ることができた。大ヒット作『ムトゥ/踊るマハラジャ』と同じシネマライズでお正月映画として公開される作品だが、ハリウッドとの共同製作、世界各地でのロケーションなど、映画のスケールにおいては『ムトゥ』を遙かに凌いでいる。上映時間は2時間55分。最初から最後まで退屈させない、まさに娯楽映画の王道だ。主演のアイシュワリヤ・ライとプラシャーントは日本人に馴染みのない顔だが、インド映画の公開本数がまだ少ないのだからこれは当然だろう。ふたりとも、インドでは大スターだという。(アイシュワリヤ・ライは、マニラトナム監督の『ザ・デュオ』にも出てました。)

 双子の兄弟ヴィスとラムーは、彼らが赤ん坊の頃アメリカに移民してきた父親のレストランで働きながら、大学で最先端の医学を学ぶ好青年。ふたりは店の手伝いで空港にランチを配達した際、インドからやって来たマドゥの一家と知り合いになる。マドゥの祖母が手術のためにアメリカを訪れ、それにマドゥと彼女の兄が付き添ってきたのだ。訪問先の住所をなくして困り果てていた一家を、同郷のよしみで助けたヴィスとラムー。これをきっかけに家族同士の交流がはじまり、やがてヴィスとマドゥは愛し合うようになる。マドゥの家族はふたりの気持ちを知って結婚させようとするのだが、これを知ったヴィスの父親は大反対。兄弟の父親には、双子の息子を双子の姉妹と結婚させようと心に誓っていたのだ。その裏には、ひとつの悲しい物語があった……。

 映画には3組の双子が出てくるが、これをすべて合成で処理。この映画のコンセプトは、ずばり「出し惜しみしない合成」につきる。普通の映画ならスタンドインやカメラの切り返しなどで処理するであろう場面も、きちんと合成で見せてくれる気前のよさ。しかもそれが最新のデジタル処理ではなく、オプチカル処理だったりするのがすごい。(双子が出てくる場面では、必ず片方の画質が悪くなる。)映画の中では「ひとり二役」で双子を作っているのだが、それを茶化すかのように、物語の中で「ひとり二役」の双子を登場させるのも面白い。

 ミュージカルシーンは1曲歌うごとに世界各地の名所旧跡が出てくる、映画『アラジン』の「ホール・ニュー・ワールド」状態。物語の中にはインドとカリフォルニアしか出てこないのに、歌が始まるやいなや、ラスベガス、ニューヨーク、グランドキャニオン、パリ、ローマ、ピサ、エジプト、中国など、世界各地をぐるりと1周してしまう。インド映画では「歌が始まると突然ヒマラヤ」というのはよくあるパターンだが、この映画のスケールにはかなうまい。インド映画はいずれスペースシャトルで宇宙に飛び出すぞ!

 楽しい映画なのは事実だけど、これをインド映画の最高傑作と言うのはどうも……。僕は『シャー・ルク・カーンのDDLJ』の方が何倍もすごいと思う。

(英題:JEANS)


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