少女革命ウテナ
アドゥレセンス黙示録

1999/07/30 東映第1試写室
こんなアニメが劇場公開されるなんて、まさに世紀末だ〜!。
この映画が作られたこと自体が興味深い。by K. Hattori


 2年前の春からテレビ放映された「少女革命ウテナ」の劇場版。テレビの続編ではなく、まったく新しい番外編として作られたそうなので、僕のようにテレビを見ていない人が観てもある程度はわかるらしい。「らしい」と書くのは、僕が今回観て「なんじゃこりゃ!」と驚いたから。この劇場版を観ても、テレビ放映版がまったく想像できないぞ。キャラクター・デザイン、美術、物語の設定、ストーリー展開、演出など、どれをとってもマニアックすぎる。このマニアックさというのは、『エヴァンゲリオン』のようなマニアックさとは違う。いわゆる「美少女ソフト・ポルノ・アニメ」みたいなマニア度なのです。この映画の中では、レズビアンや近親相姦がごく当たり前の風景として登場する。いわゆる「ヤオイ」的なテイストなのかもしれないけど、僕自身はあまりそうした方向に詳しくないので、こうした映画を観るとビックリしてしまうのだ。

 つい先日観た『カードキャプターさくら』もゲイ&レズビアン・ムービーの匂いが濃厚だったけど、今回の『少女革命ウテナ』はそれ以上に描写が直接的で露骨です。少女同士のキスシーン、ベッドシーン、男女交合のメタファーなどが次々に登場して、ウブな僕は試写室で頬を赤らめてしまいました(嘘)。こうしたテイストはコミケットなどの自費出版メディアに端を発し、商用少女マンガ誌経由で深夜アニメやOVAに入り込み、今年になって相次いで映画化されたものでしょう。東映アニメ的な明朗快活冒険活劇路線がジブリの『もののけ姫』で行くところまで行ってしまい、続く『ホーホケキョ となりの山田くん』が興行的には大失敗となった同じ年に、『カードキャプターさくら』と『少女革命ウテナ』が劇場アニメとして登場したのは、何か象徴的です。

 物語は美少年・美少女・美男・美女だけが登場するファンタジックな学園ミステリーに、フィリップ・K・ディック的というより『ダークシティ』的な世界観をオーバーラップさせたファンタジー。全寮制の名門校に転校してきた男装の少女・天上ウテナが、学校の中で初恋の相手・桐生冬芽と再開。彼が指にはめていた「薔薇の刻印」と呼ばれる指輪の謎、「薔薇の花嫁」と呼ばれる姫宮アンシーを巡るデュエリストたちの決闘、勝者となったウテナと薔薇の花嫁のエンゲージなど、次々に謎めくキーワードが登場して、物語がずんずん進んでいく。

 クライマックスは『ダークシティ』『うる星やつら/ビューティフル・ドリーマー』『トゥルーマン・ショー』『未来警察ウラシマン』などをゴチャマゼにして、さらにスティーブン・キングのテイストをトッピングしたような奇妙なカーチェイス。それまでのナゾナゾ攻勢をすっ飛ばして、ここで一気に物語がヒートアップ。有無を言わせずヘンに清々しいハッピーエンドになってしまうのも奇妙だが、計算ずくでここまで無茶苦茶をやれるのもひとつの才能だと思った。「なんじゃこりゃ!」という印象は最後まで残るが、後味は悪くないぞ。


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