マーサ・ミーツ・ボーイズ

1999/07/02 徳間ホール
ロンドンに来たアメリカ人女性がイギリス人男性3人と恋に落ちる?
ジョセフ・ファインズ主演のラブコメディ。by K. Hattori


 『恋に落ちたシェイクスピア』でシェイクスピアを演じ、『エリザベス』ではエリザベス女王の恋人を演じた、ジョセフ・ファインズ主演のロマンチック・コメディ。ヒロインのマーサを演じているのは、『コン・エアー』や『パッチ・アダムス』でヒロインを演じたモニカ・ポッターだ。物語はファインズ演ずるローレンスという男が、精神分析医に自分の悩みを相談し、その告白に合わせて回想形式でドラマが描かれるという構成。精神分析医を演じているのは、『ニル・バイ・マウス』や『フェイス』で凶暴な男を演じていたレイ・ウィンストン。この配役にはちょっとした仕掛けがあって、最後にニヤリとさせられる秀逸なオチがついています。

 ミネアポリスのレンタカー会社に勤めるマーサは、辛い恋の思い出を振り切り、退屈な仕事や嫌な上司から逃れて人生の再スタートを切るために、手持ちのお金で行ける最も遠い町ロンドンにやってきた。そんな彼女と知り合うのが、音楽業界の重役ダニエル、売れない役者のフランク、ブリッジの教師をしているローレンスという3人のイギリス人男性。じつはこの3人は、子供の頃からの幼なじみで親友同士。この3人がわずか1日の間に、そろいもそろってマーサと知り合って彼女に恋してしまう。マーサはそんなことを知らないまま、空港で出会ったまま行方しれずになってしまった「運命の人」を探し求める。「そんな偶然あってたまるか!」と言いたくなるような場面が続きますが、人と人との出会いなんてそもそもが偶然だし、運命的な恋も偶然なしには成り立たないのは当たり前の話。あまり目くじらを立てることなく、面白がって観ていた方がいいと思う。

 物語はローレンスの告白に沿って進みますが、男たち3人の視点を彼がすべて代弁するため、一通りの説明が終わった後に、また物語が最初に戻って別の視点からストーリーを語ったりする。マーサというひとりの女性をめぐる物語を、3つの視点から別々に語るわけです。ダニエルの視点からは見えなかった事実がフランクには見え、そのふたりも知らない事実をローレンスだけが知っているという面白さ。はたしてマーサは幸福をつかみ取ることができるのか? ローレンスは友情と恋のどちらを選び取るのか? 話を聞いている精神分析医がいつしかローレンスの話に引き込まれていく様子に、じつに説得力がある。僕も最後まで、ハラハラドキドキしながら映画を観てしまいました。

 映画の冒頭から回想シーンになり、ローレンスの告白が終わった時点で映画の冒頭に戻ってくるという構成。物語のクライマックスはここからなのですが、残念なことにこの映画では盛り上がりに少し欠ける。それまでの回想シーンの組立があまりにも面白かったため、観る側としてはありきたりな結末に満足できないのです。もっとも、最後のハッピーエンドはなかなか気持ちよく決まってます。1930年代のハリウッド製ラブコメディみたいで、幕の引き方がしゃれていると思いました。

(原題:MARTHA meet FRNK, DANIEL & LAURENCE)


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