ハムナプトラ
失われた砂漠の都

1999/05/31 イマジカ第1試写室
巨大な悪の力を持つ古代エジプトの神官が現代に甦る。
昔懐かしい荒唐無稽な冒険活劇の復活!by K. Hattori


 1932年のユニバーサル映画『ミイラ再生』を、最新のSFX技術を使ってリメイクした冒険活劇映画。原題はオリジナル版と同じ『THE MUMMY』なのだが、日本の配給会社はこのタイトルを嫌って、ミイラが眠る砂漠の古代都市の名前をタイトルにしている。プレス資料にも『ミイラ再生』の名前はないし、原題もインターネットのURL部分に少し出ている程度で完全に無視。しかしこうした努力を、僕はある程度評価したい。今回の映画は、古代エジプトから甦ったミイラ男の恐怖を描いたモンスター映画ではない。むしろ『インディー・ジョーンズ』シリーズに代表される、ファンタジックな秘境探検物語になっているのだ。もちろん古代エジプトから甦った邪悪な神官は登場するのだが、異様な容姿で観客を震え上がらせる怪物とはちょっと違う。彼は失われた古代エジプト王朝を支配していた呪術的な力を、科学万能の現代によみがえらせる魔術師なのだ。

 映画は3千年前のエジプトから始まる。エジプト王セティ1世の右腕として働く神官イムホテップは、王の愛妾アナクスナムンと禁断の恋に落ちる。王にふたりの関係が露見したとき、アナクスナムンは恋人イムホテップに復活させてもらうことを信じて自ら命を絶つが、彼は衛兵に捕らえられ、生と死の間の苦痛を永久に味わうという「ホムダイ」の刑に処せられてしまう……。このプロローグはコッポラの『ドラキュラ』に影響されたものかと思ったら、オリジナル版にもある設定のようです。イムホテップを演じたアーノルド・ボスルーがなかなかのいい男で、恋人アナクスナムンを演じたパトリシア・ヴェラスケスのコスチュームもセクシーでよろしい。物語はここから一息に西暦1920年代までジャンプ。そのとたんに『アラビアのロレンス』ばりの壮絶な騎馬戦が登場する呼吸に、思わずニヤリとさせられます。

 プロローグに登場する古代エジプトの風景は、ドリーム・ワークスのアニメ『プリンス・オブ・エジプト』を実写でやっているような大迫力。CGと実写の合成がじつに巧みです。イムホテップが葬られた後、3千年の時の流れを、遺跡の痛み具合で表現した部分も素晴らしい。映画は後半になると、ミイラと人間の剣戟などCG映像のオンパレードになるのですが、新鮮さという点ではプロローグの方がすごいと思いました。後半は特撮に次ぐ特撮で、かなり食傷気味になってきてしまうのです。この映画の特撮を担当しているのはILM。技術的には『スター・ウォーズ/エピソード1』と同じです。

 エジプト考古学者のイギリス人兄妹、エヴリンとジョナサンを演じているのは、レイチェル・ワイズとジョン・ハナ。彼らをハムナプトラに案内するアメリカ人探検家を、ブレンダン・フレイザーが演じています。フレイザーはいい男ですが、こうして見るとやっぱりバカっぽいね。今回は役柄そのものもバカなんだけど……。ドラマ部分は結構スカスカなので、もう少し削って1時間50分ぐらいの映画にするとよかったかも。

(原題:THE MUMMY)


ホームページ
ホームページへ