ソルジャー

1999/03/18 ワーナー試写室
戦争のために純粋培養された究極の兵士「ソルジャー」。
訓練や戦闘を描いた序盤はすごく面白い。by K. Hattori


 『モータル・コンバット』『イベント・ホライゾン』のポール・アンダーソン監督が、『ブレードランナー』『許されざる者』『12モンキーズ』の脚本家デイビッド・ウェブ・ピープルズと組んで作った、カート・ラッセル主演のSFアクション映画。宣伝文句は『「ブレードランナー」のスタッフが結集!」と華々しくぶち上げていますが、ピープルズ以外に『ブレードランナー』から流れてきたのは、美術のデイビッド・L・スナイダーぐらい。これだけでカルト映画『ブレードランナー』の名前を出してきてしまうのは、やや大げさな気もするけどね。映画は序盤がものすごく面白いけど、中盤でかなりダレて、後半は普通のB級SFアクションになります。観ても損はないけど、今すぐ観なくてもいいような映画ではある。僕はこの映画より、試写の直前に流されたウォシャウスキー兄弟の新作映画『マトリックス』の予告編にしびれてしまった。こっちの方がスゴイぞ!

 『ソルジャー』は近未来が舞台のSFですが、物語が始まるのは1996年。つまり、我々の暮らしている世界とは別の歴史を持つ、別の世界を舞台にしています。その世界は極度に発達した軍事体制国家。究極の兵士「ソルジャー」を養成するために、産院で生まれた赤ん坊は生後数日で選別。ソルジャー候補の子供たちは特殊な施設の中で、人間的な感情をすべてはぎ取った戦闘マシーンとして訓練される。上官の命令がどんなに理不尽なものであっても黙って従い、自らの命をかえりみず、目的のためには手段を選ばない。ソルジャーは人間でありながら、人間らしさを奪われた存在なのです。

 兵器に耐用年数があるように、究極の生物兵器であるソルジャーにも耐用年数がある。新型の兵器が旧式の兵器を時代遅れのものにしてしまえば、旧式の兵器は廃棄処分される決まりだ。この映画の主人公トッドは、生まれてから40年以上も第一線のソルジャーとして活躍してきたが、遺伝子工学を利用して生まれた新型ソルジャーに機能面で劣っていたことから、非情にも廃棄処分されることになる……。映画はこのへんまでが、すごく面白かった。ソルジャー養成のため、幼少時からの徹底したマインド・コントロールを行うくだりは、科学的に管理されたオウム真理教の修行道場みたいでした。オウムに限らず、カルト教団の中で純粋培養されている子供たちというのは、多かれ少なかれこの映画のソルジャーと同じような苦悩を味わっているのかもしれない。

 映画の中盤は『ポストマン』みたいだし、終盤のクライマックスは『ユニバーサル・ソルジャー』みたいになってしまうのが残念。人間性をなくしている主人公が、徐々にそれを取り戻して行く構成ですが、それがいかにも中途半端。むしろ徹底したマインド・コントロールで作られた怪物が、プログラミングされた行動規定ゆえに軍組織を裏切り、民間人を助けてしまうという方向に話を進めた方が面白かったと思う。でないと、トッド以外のソルジャーが軍を裏切る行動が説明できない。

(原題:SOLDIER)


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