学校の怪談4

1999/01/21 東宝第1試写室
海辺の小学校に伝わる悲しい物語が現代によみがえる。
『愛を乞うひと』の平山秀幸監督作。by K. Hattori


 人気シリーズ最新作。監督は『学校の怪談』『学校の怪談2』を撮り、昨年は『愛を乞うひと』が批評家からも高く評価された平山秀幸。今回はこれまでの3作とはタッチを変え、少年少女のファンタジックでちょっと切ない一夏の冒険をシリアスに描いています。恐さのグレードは、今までの「甘口」から「中辛」ぐらいにアップしている。ちなみに昨年の『新生・トイレの花子さん』は「大辛」。これはすべてバーモントカレー的な評価で、『リング』になるとジャワカレーの「大辛」を出してくる必要があるかな。『愛を乞うひと』の直後だからというわけでもないでしょうが、今回の映画には全体にノスタルジックな味があります。舞台になるのが、戦前の木造校舎や、木造の旅館だったりするし、画面サイズもシネマスコープ。これには驚いた。

 物語は戦前の小学校の校庭からはじまります。学校に「尋常小学校」の表示があるので、これは昭和16年以前だとわかります。学校でかくれんぼをしている子供たちは、突然襲ってきた大津波に学校ごとさらわれて命を落としてしまう。物語はそれから60年後の現在。夏休みに従姉の家に遊びにきた恒と弥恵の兄妹は、近隣の小学生たちが次々に行方不明になる事件に遭遇する。次々起こる不思議な出来事。恒も誰かが自分を呼んでいる気がして、夜中に夢遊病者のように海岸までさまよい出る始末。すべては海底に沈んだ学校に関係あるらしい。堤防から海を見つめる、不思議な老人の正体は誰なのか。

 この映画の欠点は、東京から来た兄妹のうちどちらが主人公なのか、途中まではっきりしないこと。映画の中盤以降は、幽霊にさらわれそうになる兄を助ける妹が大きく全面に出てきて、物語をぐんぐん引っ張る。ところが最初は兄の方が主人公にも見え、兄から妹への主役交代がスムーズに行われていない印象を受けた。出演している小学生たちの演技力不足もあるのだろうが、各登場人物が曖昧で区別が付きにくい。もう少し子供たちが個性豊かに描けていると、もっと物語全体に厚みが出てきたと思う。この映画では子供の力不足をベテラン俳優たちが補っているのだが、大人たちの登場シーンが少ないのでそれにも限界がある。

 そんな欠点のある映画ながら、僕はこの作品に感動して最後はちょっと泣いてしまった。最近、本当に涙もろくて、ちょっとしたことで泣いてしまうのには困ったもんだ。僕は目が悪いので、泣き出すと文字通り「眼鏡が曇る」のです。僕が今回気に入ってしまったのは、お兄ちゃんを心配して、ひとりで夜の町に出て行く妹・弥恵ちゃんの奮闘ぶり。(演じてる豊田眞唯ちゃんは、ちょっと菅野美穂に似てるかも。)物語としてはかなり強引ですが、僕はこの子が気に入りました。ラストシーンも、わかっているのに泣かされちゃったよ。

 この映画で唯一気になったのは、子供たちが海に平気でゴミを捨てること。海から拾ってきたランドセルだからといって、また海に捨ててはいかんよ。


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