タロス・ザ・マミー
呪いの封印

1998/11/26 東宝東和一番町分室試写室
『ハイランダー』シリーズのラッセル・マルケイ監督が撮ったミイラ男。
マルケイ監督らしさがあまりなかったのが残念。by K. Hattori


 『ハイランダー』シリーズでお馴染みの、ラッセル・マルケイ監督最新作。3千年前に死んだ古代エジプトの呪術師が、現代のロンドンによみがえるというホラー映画だ。「マミー」というのはミイラのことで、この映画はハリウッドに新たな「ミイラ男」ブームを呼び込んだ作品として注目されたらしい。もっともこの映画のモンスターはミイラではなく、それを包んでいた包帯なんですが……。主演はジェイソン・スコット・リー。彼はテレビ・シリーズ「ザ・ハンガー」で、マルケイ監督が演出したエピソードに出演していたことがある。今回は殺人事件の捜査でロンドンにやってきた、アメリカの刑事という設定。僕はマルケイ監督の映画がわりと好きで、今回も期待に胸を膨らませて試写室に駆け込んだのですが、正直言ってちょっと物足りなかった。

 映画の冒頭は1948年。エジプトの遺跡発掘現場で、「タロス」と記名された無盗掘の墓が見つかるのだが、発掘に立ち会った考古学者は不思議な力によって命を落とす。クリストファー・リー扮するターケル博士は、最後の力を振り絞って墳墓へのトンネルを爆破して封印した。ところがそれから50年後、ターケル博士の孫娘サマンサが再びタロスの墓を発掘し、奇妙な形の棺や副葬品をロンドンの博物館に運ぶ。石棺の中にあったのは、遺体を包んでいた包帯だけだ。やがて博物館で夜警が殺され、展示されていた包帯が盗み出された。そこから謎の連続猟奇殺人事件が起き始める。ある者は両目を、ある者は肺を、生きながらにえぐり取られていた。最初の犠牲者がアメリカの下院議員だったため、アメリカ人刑事ライリーも捜査に参加する。やがて明らかになるのは、邪悪な古代の呪術師タロスが間もなく復活するということだった。ライリーはサマンサと共に、タロスの復活を阻止しようとするのだが……。

 博物館から物語が動き出すという場面は、同じマルケイ監督の『シャドー』を思い出したが、今回の映画はそれよりだいぶ安っぽい。マルケイ監督と言えば、ハッタリの利いたきらびやかで華麗な映像表現が特徴だが、今回はそうした場面がほとんど見られないのも不満だ。CGを使ったタロスの包帯姿は面白いのだが、それが天井をはい回る場面はひどく安っぽいものに感じられる。この布をひらひらさせることで、もっと恐怖を演出できる部分があると思うのだが、最初から最後まで包帯が大活躍してしまって、やや興ざめさせられてしまった。もっともこうしたチープかつキッチュな感覚が、マルケイ監督らしさなのかもしれない。

 最後のどんでん返しは面白かったが、それまでの物語展開が場当たり的なので、意外性の度合いが低くなってしまった。クライマックスまでをぐいぐい盛り上げて、それが一気に崩壊する様子が見たかった。じつはこの映画、日本公開版は2時間だが、アメリカでは1時間35分の版が公開される予定。むしろそちらの方が、すっきりまとまっている可能性もあるぞ。

(原題:Talos the Mummy)


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