マドラスカレッジ大通り

1998/11/03 パンテオン
東京国際ファンタスティック映画祭
親友同士が同じ少女に恋をした。はたして友情と恋の行方は?
過激なアクションシーンが見ものの学園ドラマ。by K. Hattori


 今年の東京ファンタは「インド映画特集」が大きな売り物で、この日は文化の日の休日ということもあって、大きなパンテオンが満員満席、さらに立ち見の出る盛況ぶり。かく言う僕も、劇場の最後列で立ち見でした。寝坊して遅れて行ったのが悪いんだけどね……。

 ライバル大学に通うふたりの男子学生が、同じひとりの女性に恋してしまい、友情と恋の板挟みに悩むというお話。ヒロインは主人公たちが自分に向ける気持ちに気付かず、主人公たちも彼女との友情が壊れるのを恐れて、彼女への想いを口に出さない。やがて親友も同じ女性に恋していると知って大いに悩むものの、恋をあきらめ切れずに、やがて友情にはヒビが入りはじめる。今時少女漫画ですら流行らないようなベタベタの三角関係に、どっぷりはまってしまう主人公たちの姿は、それだけ見ればやけに滑稽です。愚図な男と、鈍感な女の関係は、いつまでたっても一向に進展しない。しかしそこはインド映画。ただぼんやりと、古くさいラブストーリーをなぞってはいない。小さなストーリーを過激にチューンナップして、まるで軽自動車にF1エンジンを載せたようなパワーとスピード感で、最初から最後まで突っ走る。

 この映画がどのぐらい過激かというと、例えばライバル大学の学生同士が町中で乱闘騒ぎを起こせば、広い幹線道路を埋め尽くす大群衆が組んずほぐれつの激闘を交わし、居合わせた自動車は人並みに飲み込まれ、数10台が巻き添えを食って数台が完全に大破。主人公が乗り遅れたバスに向かって走れば、あおりを食って道路上では自動車が数台オシャカになる。ヒロインの危機を主人公たちが力を合わせて救出するクライマックスに至っては、ビルのゴンドラからヒロインは宙づりになり、バイクは空を舞って街頭に激突し、タンクローリーが爆発炎上してしまうのだ。このラストシーンが、大画面で観られたとは幸運。すごいのは、これらの大惨劇を引き起こしても、主人公たちがまったく何のとがめも受けないこと。道路上での大乱闘に警察のパトカーが駆けつけても、「ケンカはいかんよ。さあ、仲直りだ!」と説教されておしまい……。インドはなんて寛容な国なんだ!

 ダンスシーンなどは、伝統的なインド音楽に加え、レゲエあり、ロックあり、ソウルミュージックありで、完全に無国籍化してます。大都市の大学街が舞台ということもあって、金髪碧眼の女子大生がゾロゾロ登場するし、ファッションも完全に欧米流。ミュージカル場面だけを観ていると、どこの国の映画だかわかりません。でも映画からは、インド映画の匂いがプンプンします。

 文化の違いをはっきり感じるのは、主人公である男子学生同士が友情を深めるシーンの描写。音楽に合わせてまるでラブシーンのような友愛が描かれますが、男同士が抱き合って眠るシーンは、日本人の目から見てもホモダチックに見えてしまう。場内ではこの手のシーンが登場するたびに、笑い声が起きてました。これじゃ、女性に対して奥手なのも当然か……。

(原題:Kadal Desam)


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