ナイトウォッチ

1998/10/15 松竹第1試写室
死体安置所のアルバイト学生が猟奇殺人事件に巻き込まれる。
ユアン・マクレガー主演のサスペンス映画。by K. Hattori


 オランダ出身の映画監督オーレ・ボールネダルが、オランダ時代に作った自作『モルグ』をアメリカでリメイクしたサスペンス映画。死体安置所で夜警(ナイトウォッチ)のアルバイトを始めた大学生マーティンが、娼婦を狙った連続猟奇殺人事件に巻き込まれる物語だ。犯人は死体安置所に忍び込んで、自分が殺した犠牲者の遺体をもてあそび陵辱する。警察はマーティンが犯人ではないかと疑い、犯人の目的もマーティンを犯人に仕立て上げることにあるらしい。同じ頃、マーティンの親友ジェイムズも、娼婦を相手に危険なゲームを繰り返していた。「並大抵のことでは刺激が感じられない。もっと大きな刺激がほしい」と公言するジェイムズは、マーティンを危険なゲームに引きずり込もうとしている。犯人はマーティンの身近にいる。ジェイムズが犯人なのか?

 マーティンを演じるのは、『トレインスポッティング』のユアン・マクレガー。その恋人キャサリンに、パトリシア・アークエット。親友ジェイムズにジョシュ・ブローリン。そして事件の担当刑事に、ベテランのニック・ノルティが配役されている。最近アメリカでの活躍ぶりが目立つマクレガーだが、この映画のような典型的アメリカ青年を演じたのは珍しいかも。

 映画は序盤がマジで恐い。前任の老夜警に仕事の内容を一通り教えてもらう昼間は、施設全体にこうこうと明かりがついているし、あちこちの部屋に人の姿も見える。ところが夜になって職員が全員帰宅し、真っ暗になった施設の中を巡回するときの恐さ。聞こえないはずの音や声まで廊下のすみから聞こえてきそうな静寂の中を、自分の足音だけがコツコツと響き渡る。前任の夜警が「絶対にラジオを用意しろ」と言ったのは、その静寂が夜警の神経を参らせてしまうためです。建物の中にいるのは、夜警が1名と、死体安置所にある数体の死体だけ。死体安置所の中には非常ブザーのスイッチが用意されていて、もし死体が蘇った時は、それを押して夜警に知らせる仕掛けになっている。死体が蘇ることなど絶対にない、と言い切る前任者の真剣な顔が、何か隠された事実をほのめかしているようでまた恐い。

 序盤のこの恐さに、観客であるこちらの神経まで参りそうになる。むしろ、中盤以降のミステリーの方が安心してみていられる。「何が起こるかわからない恐怖」より、「何か起こってしまった後片づけ」の方が、目的が明確な分だけ心が安まるのです。たとえそれが、殺人犯に両手両足を縛り上げられて、電動カッターで生きながらに解体されるようなことであったとしても……。

 ミステリーとしての切れ味はあまり鋭くない。僕は途中で犯人がわかってしまいましたし、最後に犯人正体を現した後のショック描写なども、観客の息をのませる鮮烈さがないと思う。前半のジワジワくる恐怖描写の方が、この監督の得意分野なのかもしれません。これで後半がキリリとまとまれば、この映画は傑作スリラーになったのにな。オリジナル版はどうだったんでしょう。

(原題:NIGHTWATCH)


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