アウト・オブ・サイト

1998/10/13 UIP試写室
脱獄した銀行強盗と、彼を追う女保安官が禁じられた恋に落ちる。
原作はエルモア・レナード。出演者が豪華。by K. Hattori


 エルモア・レナードの原作を、『セックスと嘘とビデオテープ』のスティーブン・ソダーバーグが映画化。主演はジョージ・クルーニーとジェニファー・ロペス。刑務所を脱獄した銀行強盗と、彼を追いかける若くて美人の連邦保安官が恋に落ちる話だ。製作総指揮のバリー・ソネンフェルドは、以前別のレナード作品『ゲット・ショーティ』を映画化したこともあるくらいだから、もともと彼の作品が好きなのかもしれない。レナード原作の映画は『ゲット・ショーティ』にしろ『ジャッキー・ブラウン』にしろ『タッチ』にしろ、いつも豪華スター総出演のきらびやかなキャスティングになる。今回の『アウト・オブ・サイト』でも主演のふたりに加え、ヴィング・レイムス、アルバート・ブルックス、デニス・ファリーナ、ドン・チードル、ルイス・ガズマンなど、最近のハリウッド映画で「よく見る顔」が勢揃い。他にもナンシー・アレンが出ているし、『ジャッキー・ブラウン』の出演者だったマイケル・キートンとサミュエル・L・ジャクソンもゲスト出演している。

 映画は中盤から結構面白くなってくるのですが、発端となる銀行強盗シーンと、車のトランクの中で主人公たちが恋に落ちるシーンがやや迫力不足で、説得力に欠ける。ここはどう細かく段取りをつけてもどうせ説明不足になるので、演出のテンポだけで観客を「その気」にさせなければならない。タランティーノならメリハリのついた演出で観客をうまくごまかしてくれるんでしょうが、ソダーバーグの演出にはその力がありません。銀行強盗のシーンでは、銀行の窓口嬢がなぜジョージ・クルーニーに恐怖を感じるのか説明はしてあるものの、窓口嬢が恐怖を感じるキッカケが弱いので「お客様、ご冗談を」で終わってしまう予感がしてハラハラした。

 結局、脚本ではなくて演出の問題だと思う。ジェニファー・ロペスの登場シーンも、彼女が妻子持ちの男と不倫中で、その恋に少し疲れ気味であることが言葉では説明されていますが、言葉の問題で終わってしまっている。だから、魅力的なクルーニーと出会って恋に落ちる場面にひっかかりを感じる。またクルーニーの方も、どんなに魅力的な男なのかということが観客にうまく飲み込めていないままロペスに出会ってしまうので、「なんで彼女はこんな男に惚れるのかな?」と思ってしまう。刑務所の中のシーンが少しあるのだから、この限られた場面を使ってもっと彼の魅力をアピールしなければならない。

 演出の切れ味の鈍さは中盤以降も同じですが、話が面白くなってくるのであまり気にならなくなる。それでも刑務所の中の過去を描くシーンと、刑務所を脱走した後の様子をカットバックして行くくだりは切れ味が鈍すぎる。回想シーンが現在に追いついて映画の冒頭シーンにつながる場面も、まったく鮮烈な印象を与えません。

 面白い話ではありますが、2時間3分はやや長い。会話のテンポを上げて1時間50分ぐらいにすれば、今よりもっと面白い映画になったと思うけど……。

(原題:OUT OF SIGHT)


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