がんばっていきまっしょい

1998/10/10 新宿東映パラス2
今年1番応援したい日本映画を試写に続いて劇場でも鑑賞。
お願いだから大ヒットしてほしい! by K. Hattori


 今年1番のお気に入り映画なので、オフも兼ねて、公開初日に3度目の鑑賞と相成りました。4時20分からの回を観ようと思ったのですが、諸事情で少し遅刻して映画館に入ったら、主人公の悦子はもう男子ボート部員に混ざって練習を開始していました。劇場内は8割か9割ぐらいはお客さんが入っていて、スクリーン正面の席はほぼ満席。僕は劇場の中段やや上、右の方の席に陣取ったのですが、この新宿東映パラス2という劇場は、スクリーンサイズに比べると客席の左右袖が長く、僕がいた席はあまりいい場所とは言えません。この劇場で映画を観る人は、少し早めに出かけてスクリーン正面の席を早めに確保した方がいいでしょう。『がんばっていきまっしょい』を今までに2回試写室で観ている僕は、上映が始まっても劇場内が真っ暗にならないことがやや気になりましたが、試写室と違ってスクリーン大きいです。

 「シナリオ」誌の11月号に、この作品のシナリオが載っていますが、映画化の際はいくつかのシーンが変更されたり削除されたりしています。おそらく構成上最大の変更は、映画の最後に艇庫が取り壊された現在の海岸を入れなかったことでしょう。もしこのシーンが残っていると、「現在−過去−現在」というサンドイッチ型の構成になるのですが、僕はこのシーンを切って「現在−過去」となっている今の構成の方が、物語に広がりが出てよかったと思う。サンドイッチ型の構成にすると、せっかく主人公に感情移入して観ていた映画が、最後に観客から切り離されて、小さくまとまってしまったような気がします。「通り過ぎてしまった季節」「消えてしまう一瞬の輝き」というテーマは、映画の中で何度も繰り返し強調されていることなので、映画の最後に観客にだめ押しすることはありません。

 「消えてしまう一瞬の輝き」というテーマは台詞で語られるだけでなく、合宿の夜の花火や、寺の境内で行われる万灯会のシーンなどでも象徴的に描かれています。万灯会の場面でリーが「淋しいなぁ、来年はもうないし」とつぶやく場面や、準決勝の前日、布団の中で悦子がつぶやく「このまんまでおれたらええのに……」という台詞、準決勝直前、コーチの晶子が少女たちに言う「アンタら見よったら、私のあの頃……ボートしかなかって、他に何もなかって、そんな自分がつまらんと思っとった……けど、それでよかったんよ……今日のアンタら好きよ」という台詞など、肩肘張ることのない自然な台詞の数々に、思わずホロリととしてしまいます。

 悦子の父親を白竜が演じているのですが、準決勝進出を報告する我が子にはげましの言葉をかけることもなく、ただ体の心配だけして電話を切ってしまう、口数の少ない父親の姿にも好感が持てます。ボート部を辞めるという娘の言葉を聞いて「情けないのぉ」とつぶやく場面も面白い。あまり自己主張しない人物なのですが、後ろ姿がいろいろな物を語っているようです。娘の期待には添わないかもしれませんが、いいお父さんです。


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