6デイズ/7ナイツ

1998/10/06 丸の内ルーブル
ハリソン・フォードとアン・ヘッシュが無人島に墜落して大騒ぎ。
物語は古典的なラブ・コメディです。by K. Hattori


 ハリソン・フォードとアン・ヘッシュが主演の、なんとも古風なラブ・コメディ。男は都会での生活に疲れ、リゾート地で小型機のパイロットとして自由気ままな生活を送っている野性味たっぷりの男。女はニューヨークで女性誌の副編集長として活躍し、恋人と1週間の休暇を楽しむために島を訪れたばかり。性格も年齢もライフスタイルも違う男女が出会い、様々な難関を共にくぐり抜ける内に、否応なく互いに強く惹かれあうようになる物語だ。こうした映画は、1930年代から'40年代頃のハリウッドで山のように作られている。『恋におぼれて』『ベスト・フレンズ・ウェディング』『普通じゃない』など、最近のハリウッドでは往年のラブ・コメディを現代風にアレンジして再生する動きが活発だが、この映画もそうした古典回帰の流れに位置づけられる作品だ。

 監督はかつて『デーヴ』という傑作ラブコメを撮ったことのあるアイバン・ライトマン。主人公たちが乗った飛行機が嵐に飲まれて無人島に不時着し、そこからどうやって脱出するかという単純な物語を、余計な脱線や厚化粧めいたサービス精神を抜きに、キリリと1本筋の通ったシンプルな作品に仕上げている。この映画の面白味は、主人公たちの会話の魅力。ピンチになればなるほどさえ渡るユーモア感覚と、絶体絶命の危機がギャグに転じてしまう会話の芸は、まるで落語か漫才のようです。アン・ヘッシュの芝居には少し固い部分がありますが、それも、場違いな場所で場違いなトラブルに巻き込まれた都会人の反応と解釈すれば悪くないもの。このツンツンした高飛車な女を、ベテランのハリソン・フォードがゆったりと受け止めて絶妙の掛け合いを見せてくれる。

 無人島からの脱出が物語の中核となるため、体裁としてはアクション・コメディ風。でもこの映画はあくまでもラブ・コメディの持ち味を壊さないように、アクション部分はサラリと流している。原生林を駆け抜け、野生動物を狩り、猛烈な勢いでボートを漕ぎまくり、急流を下り、海賊たちと戦っても、それが物語の中心に迫ってくることはない。普通の映画なら、これらのアクション・シーンを20分は見せて観客に手に汗握らせる部分でも、この映画はそれを3分か5分で切り上げてしまう。結果として、主人公たちがずたずたに傷つき汗みどろになっているにもかかわらず、映画からは汗のにおいがあまりしてこないのです。汗くさいラブコメなんて嫌だもんね。だからこれは、すごく正しい演出です。

 小型機が墜落した無人島から脱出するだけの単純な物語なので、1時間41分という上映時間はこれがギリギリの長さ。最近の長尺映画に対抗して2時間の映画にしてしまったら、この映画の面白さは大幅に後退してしまう。たぶん『カットスロート・アイランド』のレニー・ハーリンだったらそうするだろう。でもベテランのアイバン・ライトマンはそんな失敗をしない。ただひとつ残念なのは、この映画のラストシーンにもう少しパンチがほしかったこと。最後にもう1度笑えたら完璧でした。

(原題:SIX DAYS, SEVEN NIGHTS)


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